笠間陶芸大学校

 

先輩からひとこと!

前身「笠間窯業指導所」から現在までをあわせると60年以上の歴史を持つ「笠間陶芸大学校」。ここで学んだ学生たちの卒業後の進路は、もちろん様々。しかし、窯元に職を求めたり、陶芸作家のアシスタントや陶芸教室のインストラクターとなったりと、身に着けた技術を生かしてそのまま笠間に定住している卒業生も多いといいます。ここでは、卒業後も笠間に住み、陶芸作家として活躍する先輩たちから話を聞きました。彼らが知る「笠間で陶芸作家として暮らすことの魅力」とは…。

陶芸作家同士の横のつながりは大切。
制作環境の整った、笠間で制作に集中!

陶芸作家 阿部 慎太朗さん

2013年 茨城県工業技術センター窯業指導所 卒業
香川県出身。大学進学を機に上京、卒業後「笠間窯業指導所」入学。現在、笠間市内に在住。30歳

阿部慎太朗さん

現在、笠間で陶芸作家として暮らしているのは、そもそも大学の陶芸サークルに入ったのがきっかけだったと阿部さん。制作に熱中するあまり「7年かかって卒業しました」と笑います。3年前に「笠間窯業指導所」(陶芸大学校の前身)を卒業。現在、笠間市内に工房を構える新進の若手陶芸作家です。「100年後にアンティークとして流通できるものを目指して制作している」そうで、レリーフ(浮き彫り)の入った皿などの食器を作ることが多いといいます。ネット上の評判などを見ても、清潔感あふれる作風は、女性からの支持をおおいに得ているようです。

笠間で陶芸作家生活について訪ねると「横のつながりを持てることが心強い」といいます。「誰かの弟子に入ったという経験もなかったので、実際に陶芸作家になることを考えた時、その方法さえわからなかった」そう。ギャラリーやお店との取引の始め方など、先輩たちからアドバイスをもらって固めていったといいます。毎年おこなわれるGWの一大イベント「笠間の陶炎祭(ひまつり)」には、独立以来毎年参加。「あの場でしか会えない人も居ますし、大切な情報交換の機会になる」のだとか。

こちらに来て5年目となる笠間での暮らしについては「東京での生活に比べてメンタル的に余裕を持てているように感じる」といいます。実際には、朝9時から夜中1時、2時まで工房で作業をしている毎日。かえって忙しい日々をすごしているにもかかわらず、仕事に集中できているそう。

現在、阿部さんの工房には、アルバイトとして「陶芸大学校」の学生がひとり。他にもうひとり「窯業指導所」時代の知り合いに手伝ってもらっているといいます。地元の陶芸作家のために開放している大学校の施設を利用し、制作のための石こう型を作ることもあるそう。陶芸作家同士の横のつながりと、制作環境の良さ。まさに阿部さんはここ笠間で暮らすメリットを生かしているといえそうです。

 

若い陶芸作家を応援する雰囲気と
「どんな焼き物も受け入れてくれる」という空気

陶芸作家 近藤 桂さん(Keicondo)

2006年 茨城県工業技術センター窯業指導所 卒業
2009年独立。「Keicondo」として活動。茨城県笠間市出身。現在、笠間市内に在住。35歳

近藤桂さん

近藤さんは、生まれも育ちも茨城県笠間市。陶芸作家の父を持ち、現在笠間市内に工房を構えています。個性的で印象的な作品はファンも多く、笠間をホームとしつつも日本各地で展示や個展をおこなっているそうです。メディアに取り上げられる機会も増えつつあり、今後は日本だけでなく海外での展示も増えてゆくだろうと期待される若手陶芸作家です。そんな彼は、大学卒業後、陶芸作家を目指して地元・笠間の窯元で経験を積んでいた時、ひとりの元青年海外協力隊の青年と出会ったことをきっかけに、2007年「陶磁器隊員」として南米のボリビアに旅立つことになったといいます。2年間、各地で陶磁器技術の普及に努めた後に帰国。彼はこの経験によって「自分の感性に新たなエッセンスが加わった」と話します。

笠間のことを誰よりも知る彼は、この地で陶芸作家として暮らす良さについて「誰でもウェルカム!笠間はどんな焼き物も受け入れてくれる空気を感じる」といいます。「陶芸作家同士が、必要な情報を共有できたり協力しあったりできる環境がある」とも。もともと、笠間に工房を構える陶芸作家や窯元、販売店の有志たちが、ひとつにまとまって始まった「笠間の陶炎祭(ひまつり)」や、ゆるやかで確かなつながりを持った作家同士のコミュニティ。そして、地域全体がこれから陶芸作家として成長してゆく若い世代を応援する雰囲気を持っているのだそう。今、彼の工房には、今年「窯業指導所」を卒業した後輩がひとり働いています。近藤さんも、仲間や後輩を思い、支える笠間陶芸作家のひとりといえそうです。

 

「新入生」大いに語る。

この春「陶芸学科」に入学し、笠間市での新生活をスタートさせた新入生3人を紹介します。出身地も経歴も、ここに至るまでの事情もそれぞれ違いますが、目指すところは一つ。お話を聞いたのは入学からまだ2週間ちょっとしか経っていない4月21日のこと。まだ、学校と住まいの往復に精一杯という感じの三人に、ここ笠間でのチャレンジにいたる経緯など伺いました。

 

将来は、作家としてやって行きたい…。
美大卒業後の進路として笠間を選んだ。

丸山(まるやま)(じゅん)さん

愛知県から移住 22歳

丸山 純(まるやま じゅん)さん

この3月までは、名古屋造形大学で彫刻の勉強をしていたという丸山さん。「卒業後の進路を考えている時に、大学の先生を通じてここのことを知った」そう。「木材や鉄などいろいろな素材を使って創作をしてきたのですが、土が一番自分に馴染むと感じていた」というのが、最終的にこの学校への入学を決めた大きな理由だったといいます。3月の試験(後期試験)を受けるために、初めて茨城に。現在の住居に関しては「全く何もわからないので、学校で紹介してもらった一戸建てに決めた」そう。笠間市が運営している「空き家バンク」の情報を学校が共有していることでことがうまく運んだ例と言えそう。「大家さんは笠間でギャラリーをやっている方で、お隣は家具職人さん」と、実に、これから陶芸を学ぼうという学生にとって過ごしやすい環境といえるかも知れません。「一人暮らしに不安は無い」と彼、大学生の頃から自炊生活は5年目となるそう。笠間に来てからの生活は、朝7時起床。8時半から授業終了の夕方5時迄は、学校での座学、実技。「月曜と火曜は、夜8時まで教室で独自の技法やデザインを掘り下げることができるので…」とまさに陶芸一色の生活。卒業後の目標についたずねると「作家としてやって行きたいです。ここを卒業して笠間の窯元でさらに勉強するのもいいかな…」と目を輝かせる丸山さんでした。

 

「デザインと陶芸の融合を!」
スキルアップを目指して「陶芸」の道に。

波部(はべ) 圭亮(けいすけ)さん

東京都から移住 27歳

波部 圭亮(はべ けいすけ)さん

入学直前まで「東京でインテリアデザインの事務所に勤めていた」波部さん。「ブティックなどの店舗の内装設計」をやっていたそう。卒業後は「デザインと陶芸を融合して空間を生み出せるような仕事をしたい」と目標を掲げています。多摩美術大学の環境デザイン科で学び、卒業時に就職したランドスケープ設計事務所を経て、インテリアデザイン事務所へと活動の場を移したことで「インテリアとしての陶器への興味」が膨らんだと言います。「とりあえず近所の陶芸教室に通ったのですが、スキルを上げたいと思ったら週末だけではやはり難しい…」と彼。「集中して取り組みたいと考えて、この学校への入学を決めた」そう。実は、この4月から「初めての一人暮らし」をスタートした波部さん。「今までは、学校も仕事も実家から通ってましたから…。いろいろなことが新鮮」だと言います。「アパートなんですが、まだ近所の人に会ったことが無いんですよ」とも。社会人生活を経て、再び「学生」に戻った形の彼。「今は、仕事をしていた時の貯えを切り崩して生活してます。ある程度落ち着いたらアルバイトを」と考えているそう。コンビニや、飲食店などごく普通の仕事はもちろんですが、ここ笠間には「陶芸教室のスタッフ」や「陶芸作家のアシスタント」など、大学校の学生にズバリの仕事があるといいます。生徒は皆、生活のすべてが「陶芸」に結びつく、貴重な時間を過ごすことになるのでしょう。

 

夫婦揃って「笠間市移住」!
専業主婦から学生へ。陶芸作家を目指します。

矢次(やつぎ) 美穂(みほ)さん

栃木県から移住 43歳

矢次美穂(やつぎ みほ)さん

矢次さんは、自身が学校に入学するタイミングで夫婦揃って笠間に移住して来たという変わり種。「今回のことをすごく応援してくれている」という御主人は、栃木県内の比較的茨城県寄りにあるという勤め先に、笠間の新居から通勤しているそう。「数年前、陶芸教室に通い始めた」という矢次さん。新聞でこの「笠間陶芸大学校」が開校すること、そしてオープンキャンパスが行われるということを知り、早速夫婦二人での参加を申し込むことに。「年齢制限で難しいか…」との心配も取越苦労に終わり「すごく楽しめた。陶芸に対してこれまで以上の楽しさ」を感じ「入学したい!」と心から思ったといいます。昨年11月に行われた前期入学試験に見事合格。笠間への引っ越しを考えた矢次夫妻は、今年2月に市が主催した「移住体験ツアー」に参加しました。笠間市内の要所や観光名所を巡る中で出会った物件に「現在、住んでいる」そう。専業主婦から、学生となった彼女は「毎日が、陶芸という生活が楽しい。こんな幸せな時間をもらえたことが、何よりもありがたい」といいます。目指すはもちろん「陶芸作家」。矢次さんは「目の前の課題に、全力でぶつかって行く」と意気込みを語ります。今回入学者のなかで最年長者。ご主人の熱い応援を背に受けて、きっとその「思い」を結実させてください。頑張れ!