【平成30年度
参加企業プロジェクトレポート】
合同会社ヘマタイト
プロジェクトレポート②

合同会社ヘマタイト
業種:IT
所在地:東京都品川区

茨城県結城市で、16戸の農家を束ねる法人として大規模農業を営む農事組合法人宮崎協業。農家の高齢化や流通業者が求める規格基準への対応として、農業へのIT導入を模索する中、IT事業を展開する合同会社ヘマタイトが、人工知能(AI)技術を使いネギのサイズや等級を選別する機械の開発に取り組んだ。

  • 農事組合法人宮崎協業 理事
  • 秋元 勇人 (左)
  • 株式会社ヘマタイト
    代表社員 社長エンジニア
  • 茨木 隆彰 (右)

人工知能によるネギの選別機を「農業×IT」の足掛かりに

ープロジェクトではどのような取り組みを行いましたか?

茨木
私たちは茨城県結城市の宮崎協業さんの協力の下、人工知能(AI)技術を使ったネギの選別機の開発に向けて活動しました。
秋元
宮崎協業では現在、ベルトコンベアを流れるネギのサイズや等級を目視して人の手で選別し、箱詰めしています。農業人口の減少や規格に対する意識の高まりなど、農業を取り巻く環境の変化を鑑みれば、今後、農業へのIT導入は不可欠になると考えています。そうした時代の流れに対応していく手始めとして、今回はネギの選別にAIが取り入れられるか探っていただきました。
茨木
AIの開発は、教科書を使って0歳児の脳みそに特定の作業を覚え込ませるのと似た仕組みです。昨年11月にネギの収穫時期に伺い、ベルトコンベア上を流れるネギの動画を撮影し、それを“教科書”として、ベルトコンベア上のネギの位置やその大きさを認識することのできる“脳みそ”を開発しました。
秋元
結果として、AIを使ったネギの選別は技術的に実現可能だとご報告いただきました。組合の農家の方々にもこの結果を共有したいと思います。

エンジニアとして、ユーザーが求める技術の開発に熱意を注ぐ茨木さん

ー地域の農業に対してどのような問題意識を持っているのですか?

秋元
茨城県の農業の役割は、首都圏の食糧基地としてより多くの農作物を供給することです。したがって、広大な面積での大規模営農が必要ですが、農家の高齢化が進んでいる上、新たな農業人材の確保も難しいのが現状です。こうした状況下で将来にわたって大規模農業で生産・経営を維持していくための手段として、ITに期待を寄せています。
茨木
そのような思いをお持ちの一方で、法律が壁となり最新の技術を現場で最大限に活かし切れないジレンマがあることを知りました。例えば、農薬散布などでドローンを飛ばす際は、技術的には自動飛行が可能でも、監視役を2人付けなければならないそうです。こうした規制にしばられることなく農業にITを生かせるテーマを考えるために、実際に農家を訪ねたところ、ネギはサイズや形状・緑色と白色の割合など、確認する箇所が多く、選別に時間がとられている状況が見えました。そこで、AIを使い、ネギを選別する機械の開発に挑戦しました。
秋元
農作物の品質を保証する明確な基準の必要性も常々感じていた課題です。現在は熟練の農家の方々が目視でネギのサイズや等級を仕分けていますが、市場に並ぶ商品ですから、消費者にとって明らかな客観的基準が必要だと思うのです。「当社はAIで選別している」ということは、品質保証のアピールになると考えています。
茨木
選別作業をする方々の高齢化も進んでいるとのことなので、言語化することの難しい属人的な技術の継承にもお役に立てると思っています。

「時代の流れにあわせて農業の未来を考えていかなければならない」と秋元さん

人の役に立つところまで作り切って初めて「技術」と呼べる

ー残っている課題は何ですか?

茨木
今回は“ソフト”としての技術開発までできましたが、ネギの選別から出荷までの一連の工程を機械が行うためには、選別されたネギを箱に詰める作業をするロボットアームなどの機械を造る必要があります。ですが、その前に、選別機を実際に現場でどう活かすのかなど、農家の方々にとって最適な導入の在り方を検討したいと思っています。
秋元
私も同感です。今後加速する農業人口の減少に備えることが必要な一方で、ITを導入すると機械が人の仕事を奪ってしまい、農業人口の減少に拍車をかけるように見えるかもしれません。しかし、長期的な視点で考えると、深刻化する農業の人手不足を解消し、地域農業を守るための手段であると理解してもらえるよう、関係者に働き掛けたいと思います。
茨木
技術的な面でいえば、サイズだけでなく傷物の選別もできる技術まで開発したいと考えています。
秋元
ITは、ネギの選別に限らず、田畑の管理など農業のさまざまな側面で役に立つと思っています。農作業の自動化が進み、農業の繁忙期でも適度に休みが取れるようになれば、農家のワークライフバランスの向上につながり、新たな人材も確保しやすくなるのではないでしょうか。

地域の農業の担い手のことを第一に考えるからこそ、選別機の開発は焦らずに進めたいと二人は話す

技術の相談役から将来のビジネスパートナーへ

ープロジェクトに参加して、どのようなメリットや気付きがありましたか?

茨木
農業はITを組み合わせるとイノベーションを起こせる分野だと感じていたため、大規模農家としての課題や必要とされる技術を当事者から伺えたことはとても有意義でした。
秋元
農機具販売会社からは既製品を買うことしかできないので、自分たちが求める技術から相談できる企業さんと知り合えて心強く思います。最新技術の使用について、法律の規制が緩和され、農業に利用できる時が来たときに、茨城県の農業先進モデルへの道をすぐに走り出せるよう、この関係を大事にしていきたいです。
茨木
ネギの選別機に限らず、当社が技術的にどのようなお手伝いができるのか、今後も継続的にお伝えしていきたいと思います。