笠間市テレワークツアーレポート

2020年12月18日からの2日間、笠間市でテレワークツアーが開催されました。今回のツアーには千葉県の企業に勤める会社員グループや、東京都内の企業に勤めるエンジニアが参加。参加者の皆様には、テレワーク環境の体験はもちろん、笠間への移住後のイメージが膨らむ「笠間に暮らす『笠間人』に会いに行くツアー」を楽しんでいただきました。笠間市の伝統工芸品「笠間焼」のギャラリー見学や陶芸体験、地元に根付いて酒造りをする酒蔵の見学、笠間と首都圏で二拠点居住をする人たちとの交流、地元の若手農家との交流などを通し、普通の旅では知ることのできない、笠間の人と自然と文化の奥深さを垣間見ることができたツアーとなりました。

ツアープログラム

1日目

  • JR友部駅集合
  • ワークスペース「OUT WORK IROHA」で笠間市の概要説明
  • シェアサイクルでギャラリーと里山カフェ巡り
  • 笠間稲荷門前通りの散策
  • 磯蔵酒造見学
  • 笠間クラインガルテン見学
  • ETOWA KASAMA 宿泊

2日目

  • ETOWA KASAMA 朝のテレワーク
  • 穂垂ル里山農場見学・交流会
  • 桧佐陶工房で笠間焼づくり体験
  • 笠間工芸の丘
  • JR友部駅解散

1日目

JR友部駅集合

笠間市テレワークツアーの出発地は、JR水戸線・常磐線の友部駅。ここはJR品川駅が始発となる特急「ときわ・ひたち」の停車駅でもあり、東京方面からもアクセスしやすいです。
駅に集合した今回の参加者は、千葉県の企業に勤める会社員4人グループと、都内の企業で働くエンジニア1名の、合計5名。会社に勤めながらもテレワークを活用して柔軟な働き方をしている皆様です。
今回のツアーでも、集合したらまずは、新型コロナウイルス感染防止のため、健康に関する書類提出をし、しっかり検温。全員に異常がないことを確認してから、笠間市テレワークツアー1日目のスタート。まずはみんなでバスに乗り込み、笠間市に新しくオープンするワークスペース「OUT WORK IROHA」に向いました。

ワークスペース「OUT WORK IROHA」で笠間市の概要説明

「OUT WORK IROHA」は、カフェや工芸品のギャラリーが集まる通り「ギャラリーロード」の一画にあります。旧ギャラリーをリノベーションして作られたワークスペースで、Wi-Fi環境作業環境はもちろん、ミーティングルーム、複合機なども完備されています。
OUT WORK IROHAは現在、営業スタートに向けた準備が進められている最中ですが、ツアー参加の皆様には、オープン前に一足早く館内を見学していただきました。また、この施設の一室を使い、笠間市職員から、今回のツアー概要説明や、笠間市の魅力や取り組みについての説明も行われました。

OUT WORK IROHA https://www.cigr.co.jp/outwork/

シェアサイクルでギャラリーと里山カフェ巡り

市職員からの概要説明が終わった後は、笠間市が貸し出しているシェアサイクル「かさまちライド」に乗って、ギャラリーロードを走りながらギャラリーとカフェ巡り。かさまちライドの自転車は、電動アシストが搭載されているので、丘陵地帯で緩やかな起伏の多い笠間の街を走るには最適です。
この日は、利用方法のレクチャーを受けた後、みんなで自転車に乗り、ギャラリーロードに点在するギャラリーを覗いて様々な作家の作品を手に取って見たり、途中のお食事処に立ち寄ったりして楽しみました。

笠間ギャラリーロード http://www.galleryroad.jp/

かさまちライド https://www.city.kasama.lg.jp/page/page011769.html

笠間焼を始め、工芸品やアート作品が身近なところにあるのが笠間の持つ魅力の一つ。気軽に作品にふれられる街をめぐりながら、参加した皆様も「笠間の街には、アートがたくさんちりばめられているなと思いました。今回立ち寄ったギャラリーも、綺麗な中庭に作品が展示されていて、一つ一つがとてもおしゃれ。友達にも勧めたいなと思いました」と感想を述べていました。

笠間稲荷門前通りの散策

ギャラリーロードを後にした参加者たちが自転車で向かったのは、日本三大稲荷の一つに数えられる笠間稲荷神社。正月三が日の初詣には80万人以上の参拝者が訪れ、初詣参拝者数は茨城県内1位を誇ると言われています。

そして、この神社の鳥居の前を走っている通りが、笠間稲荷門前通り。ここでは現在、商店街の活性化に向けて、まちづくりの団体や商店街、行政とが連携し、地域特性を活かした魅力ある街づくりが行われています。稲荷寿司、饅頭、お焼きなどを販売する昔からの商店が観光客に人気なだけではなく、従来には無かった感性で古い蔵や見世蔵をリノベーションして活用される店舗も少しずつ増え、新たな活気が生まれている場所です。
参加者の皆様がギャラリーロードから乗ってきた自転車は、ここで返却。
ここからは、笠間市職員の案内の元、門前通りや神社周辺を散策。参加者の皆様には、神社の周りにある、昔から続くもの、そして新しく始まるものを見ていただき、この地域の今について知っていただきました。
そして散策が終わった後は、再びバスに乗り込み、次の目的地「磯蔵酒造」に向いました。

笠間稲荷門前通り http://kasapura.jp/monzen/

磯蔵酒造見学

磯蔵酒造は、JR笠間駅の一つ西側、JR稲田駅から南に徒歩数分のところにある、1868年創業の酒蔵。この酒蔵のある笠間市稲田地区は、古くから「稲の郷」と呼ばれるほど稲作の盛んな地域。そして日本最大の御影石の大地から湧き出る良質な地下水もあり、酒造りにとっても絶好の地域でもあります。
そんな笠間市稲田地区で、常に酒の傍らに寄り添い、人の手と五感による酒造りに打ち込んでいるのが、磯蔵酒造五代目蔵主・磯貴太さん。参加者たちは、磯さんから酒造りへの思いだけでなく、酒造りから繋がる米農家・地域・人との関わり、日本酒の文化や歴史のお話をたっぷりと聞かせていただきました。

磯蔵酒造 https://isokura.jp/

酒蔵の中も見学させていただき、普段は見ることのできない酒造りの現場を少しだけ垣間見ることができました。見学のなかで、磯さんから酒造りにまつわるクイズが参加者に出題されましたが、回答に苦戦される場面もありました。知っているようで知らないことの多い日本酒の世界。実際に酒蔵を訪ねることで、お酒への興味や楽しみ方を深めることができるかもしれません。さらに、日本酒を通して、その地域の中で生まれている人の繋がりを新たな視点で知ることができたのではないでしょうか。
また、見学の最後には、磯蔵酒造で作られた日本酒の試飲させていただきながら、お土産の日本酒も購入していきました。

笠間クラインガルテン見学

参加者たちが次に向かったのは、笠間の山々に囲まれたエリアにある笠間クラインガルテン。
笠間クラインガルテンは、笠間市の多様な資源を生かし、都市住民に特色あるサービスを提供するとともに地域の活性化を図るべく平成13年4月にオープンした、関東地区初の本格的な滞在型都市農園。都市部に暮らす人々の第二の生活拠点として、地域住民と交流しながら草花や野菜を栽培し、心身ともにリフレッシュできる施設です。

笠間クラインガルテン http://www.kasama-kg.jp/

参加者たちは、施設の担当者から笠間クラインガルテンの特徴を紹介していただいたり、宿泊施設の中を見せていただいたりしました。また、実際に首都圏から笠間に通い二拠点生活をしている方々から、この場所での笠間ライフの話も伺いました。
この施設を利用する方々の中には、週の半分ほど笠間クラインガルテンに足を運び、畑仕事や地域交流を楽しみながらも、Wi-Fi環境を利用しオンライン会議などテレワークをしている方もいるとのこと。また、この施設を拠点に二拠点生活を続けながら地域交流を深め、最終的には笠間に移住する方もいるそうです。

施設利用者との交流の中では、「地元の人たちがいい人だし、お米も美味しいんですよね」「冬は気温がマイナスまで行くけど、日中は日差しが当たって温かいよ」「千葉市から通っているけど交通の便がいいから通いやすいね」など、実際にこの地で二拠点生活をする人だからこその感想を伺うことができました。

ETOWA KASAMA 宿泊

笠間市テレワークツアー初日の最後に訪れたのは、2020年8月にオープンしたばかりの宿泊施設、「ETOWA KASAMA」。JR笠間駅から見て南方に位置する愛宕山の山頂付近に位置しており、広い空と地平線まで見える関東平野を一望しながら、清潔感と爽やかさのあるテントやキャビンに宿泊できます。炎の揺らぎをゆっくり楽しめる「ファイヤープレイス」、星空の下お酒を楽しめるアウトドアバーも備えるほか、宿泊だけではなくワーケーションの場所としても利用可能。
到着したころには、辺りはもう日が沈む直前。参加者の皆様は、愛宕山の上からの夜景や、ETOWA KASAMAのライトアップを楽しみながら、この日の振り返りやテレワークに取り組んでいました。
もちろんETOWA KASAMAもWi-Fi環境完備のテレワークスポット。実際に仕事をしていた参加者も、「ネットワーク環境は安定していて、普段の業務と変わりなく仕事をすることができた」と話していました。

ETOWA KASAMA https://www.cigr.co.jp/etowa/kasama/

2日目

ETOWA KASAMA 朝のテレワーク

2日目は、宿泊したETOWA KASAMAで朝のテレワークからスタート。愛宕山の上で朝日をいっぱいに浴びながら目覚めた朝は、いつもより仕事がはかどったのではないでしょうか。
気持ちのいい環境で仕事をすることで、千葉県の会社からグループで参加した皆様も、同僚や先輩との会話がいつもより弾んだ様子でした。オフィスや自宅での仕事とは全く異なる環境でのテレワークを体験してみて、「景色が本当にきれいな場所にあるので、その景色を眺めながら仕事をすることでリフレッシュにもなりました。仕事のモチベーションアップにも繋がったし、上司とも楽しくコミュニケーションをとることができました」と話していました。

穂垂ル里山農場見学・交流会

朝のテレワークを終えた後に向かったのが、笠間市上郷にある、笠間市岩間体験学習館・分校。ここで出迎えてくださったのが、この地域で農業を営む「穂垂ル里山農場」の生駒さんと、スタッフの皆様。生駒さんたちは、参加者のお昼ご飯にと、地元で採れたお米を窯で炊く準備をしてくださっていました。
生駒さんたちの指導の下、窯に火を入れて屋外の炊飯スタート。釜の蓋に重りを乗せて、圧力釜のようにしてお米を炊いていきました。炊き上がるまで約30分。もちろん炊飯器のような電子制御は行われないため、火加減や沸騰の泡立ち、そして釜の中から漂ってくるお米の香りで、炊き上がり具合を判断していくとのことです。
ごはんが炊き上がるまで、生駒さんから自社農業の取り組みや米作りへの想い、そしてこの地域に育まれてきた風景、生き物、米作り文化を守るための活動についてお話を伺いました。

生駒さんは会社員時代を経て、7年前からこの地で農業の道を歩み始めたそうです。現在、農薬を使わずに安全で美味しいお米を作っているだけでなく、上郷の自然環境や農業の魅力を知ってもらうため、笠間市農業公社が取り組む「酒米田んぼオーナー制度」にも参加。酒米を育てる田んぼのオーナーとなった方には、年に4回この地域に足を運んでもらい、田植え、稲刈り、磯蔵酒造の酒蔵見学、田んぼ周辺の生き物調査などの体験を通し、この地域の農業と自然を感じ取ってもらっているそうです。

穂垂ル里山農場 https://www.hotaru-kome.jp/

生駒さんのお話を聞かせていただいた後は、この日集まった皆様との交流も兼ねた昼食会。窯で炊きあがったお米を使ったおにぎり(新型コロナウイルス感染予防の観点から、ラップの中で自分で握るスタイル)の他、地元で採れた野菜やイノシシの肉を使った豚汁、笠間の柿など、地域の食材尽くしのお昼ごはんを頂きました。

昼食の後は、生駒さんの案内の元、穂垂ル里山農場の圃場(ほじょう)の一部を見学。1日目の磯蔵酒造見学の際に、磯さんが地元米農家との関わりを大切にしていることを伺っていたこともあり、参加者も「磯蔵酒造を訪問して『地元農家や人と人とのつながりを大切にしている』というお話を伺ったうえで、笠間の農家さんのお話を伺ったりお米をいただくことができ、笠間の方々の人のつながりを感じることができました」と話していました。

桧佐陶工房で笠間焼づくり体験

遠方からはるばる笠間までやってきた参加者の皆様。せっかくですので、笠間焼の陶芸体験にも参加していただきました。
今回の陶芸体験でお世話になったのは、ギャラリーと体験教室を併設した「桧佐陶工房」。「ろくろ」を使ったオリジナルのお椀や湯呑、お皿をつくる体験にチャレンジしました。
参加者はみんな、ろくろを使った陶芸は初めて。まずは桧佐陶工房のスタッフが、初めての方でも安心してチャレンジできるように丁寧にレクチャーしてくださいました。

桧佐陶工房 http://kasama-hisa.jp/

実際に作り始めてみると、参加者たちはみんな苦戦している様子。工房のスタッフは鮮やかにろくろを扱い綺麗な円形の器を作っていましたが、やはり見るのと作るのとでは大違い。参加者の皆様も丁寧に作っているつもりでしたが、どうしても形がいびつになってしまい、力加減がとても難しいようでした。

笠間工芸の丘

テレワークツアーの最後に立ち寄ったのは、笠間芸術の森公園の中にある、「笠間工芸の丘」。工房、ギャラリー、カフェ、クラフトショップ、アートスペース、多目的ホールなどがあり、笠間焼をはじめとしたさまざまな笠間のアートに触れ合うことができる場所です。
このクラフトショップで、笠間の魅力を会社の同僚や友達におすそ分けするためのお買い物。ここでのお土産が、笠間の話題で盛り上がるきっかけとなり、また改めて笠間に足を運ぶ機会が生まれるのではないでしょうか。

笠間工芸の丘 http://www.kasama-crafthills.co.jp/

笠間市テレワークツアーを終えて

笠間市テレワークツアーを終え、参加者も「プライベートでまた来たいですね。千葉からも90分ぐらいのアクセスで気軽に来られるし、自然や食や芸術を感じられるところがいいですね」と、笠間の魅力を語っていました。
さらに、笠間に暮らす人と出会う中で「ツアーで出会った皆さんは、笠間の事が本当に好きで、地元を大切に思っていて、これからも笠間の良さを残していきたいという想いで色々な活動に取り組まれているんだろうなと思いました」と、地域の人の持つ思いも感じ取れたようです。
テレワーク環境に関しても、「普段から在宅勤務が多いですが、自宅だと集中力が途切れてしまいます。でも笠間の人や環境にふれることでリフレッシュしながら仕事ができましたし、通信環境も不便を感じることは無かったです」とのことでした。
千葉県の企業からツアーに参加した一人は、「笠間からの千葉や東京への交通の便を考えると、社員が笠間に移住しテレワークで仕事をするのも十分可能だと思います」と語り、テレワーク環境を活用した笠間への移住についての可能性を見出していたようです。

参加者インタビュー

千葉県の情報通信会社から企業参加した、会社員4人グループにお話を伺いしました。

Q─参加のきっかけを教えてください

企業としての地方創生の取り組みの中で、以前から笠間との繋がりがありました。新型コロナウイルス感染拡大による状況から会社としてもテレワーク活用が盛んになりましたので、テレワークの場所としての可能性も考え、改めてツアーとして参加しました。

Q─笠間の街はテレワークの環境としてはいかがでしたか

笠間の街を歩き、色々な人に出会い、とても魅力ある街だと感じました。静かな環境ですし、テレワークでの仕事も集中できました。ネットワーク環境も安定しており、普段の業務と変わらず問題なく仕事ができました。
現在は自宅勤務が多く集中力が途切れてしまいますが、環境を変え、人や自然に触れリフレッシュしながら仕事をできたのは、新しい体験だったと思います。

Q─笠間までのアクセスや移動の距離感はいかがでしたか

千葉から笠間まで、車で約90分で来られますし、電車を使っても同じく90分ほどで来られます。決して長い距離ではないと思いました。

Q─今後、社員さんが笠間に移住して、テレワークで仕事をするという可能性は考えられますか

十分考えられます。こちらで担当の仕事やWeb会議もできますし、笠間から千葉や東京へ移動する際の交通の便を考えても、十分テレワークが可能な街だと思います。

Q─企業内のチームとして参加したテレワークツアーはいかがでしたか

景色がきれいな環境での仕事は気分転換にもつながりましたし、上司や先輩とも、普段と違った距離感や時間で会話できました。それに、そういった雰囲気が、テレワークで仕事をする時間にも、とてもプラスに働いたと思います。

Q─ツアーの中で、友達や同僚にもお勧めしたいとおもったところはありますか

笠間の街にたくさんあるギャラリーやカフェは友達にも勧めたいですし、プライベートでもまた来たいですね。都心からのアクセスも良く、自然や芸術を感じられるのは、とてもいいなと思います。

Q─笠間に住む人たちとの交流の中で感じたことはありますか

磯蔵酒造でのお話や、穂垂ル里山農場の皆様との交流などで、笠間に住む人たちは、人と人とのつながりを大切にしているんだなと思いました。皆さんは笠間の事が本当に好きで、笠間を大切に思いながら、色々な活動に取り組まれているのだと思います。
笠間で味わえる食も、実際にこの地に足を運んで、地域の良さや背景知ったうえで頂いたことにより、より一層美味しさを感じることができました。たくさんの人に笠間に来てもらって、この土地の味をみんなに知ってもらいたいですね。