【平成30年度 参加企業プロジェクトレポート】 イノライブ(一般社団法人社会創発塾) プロジェクトレポート
- イノライブ(一般社団法人社会創発塾)
- 業種:教育
- 所在地:東京都千代田区
イノライブは2015年に一般社団法人社会創発塾から発足したキャリア教育団体。「心の豊かさを感じるために、自分にとって大切なことを知っていて、実現できる」若者の育成を目指し、高校生を対象にキャリア教育を行なっている。10代のうちに形成される『価値観』や、個々の人生における『選択』といった答えを見つけにくい問いをテーマに、長期的な教育プログラムを展開している。これまで、活動に賛同する200名以上の大人(社会人)や大学生が、プログラムのサポーターとして参加し、豊かなキャリア教育の普及を図っている。
【教育×地域】地域に寄り添った長期的なキャリア教育
キャリア教育を行なっている団体は少なくないですが、私たちイノライブが提供している教育プログラムは、1回実施して終了というものではありません。高校生活の3年間を通し、選択分野の決定や、就職・進学の決定、学校行事など、それぞれのタイミングにマッチしたキャリア教育を実施するという独自のスタイルにこだわっています。
具体的には、学生が自分の価値観を見つけるために、進路決定などのタイミングで生徒と一緒になってその人の価値観について考える、というようなことです。他にも、就職先を決める際に、世の中の仕事や会社がどのようにつながって社会ができているのかを知るためのきっかけ作りなどを行っています。
また、学内・学外にこだわらず様々な活動を通して地域に働きかけ、学生と地域の大人たちとの間に接点を作っています。
この教育プログラムは、学生のみならず学校そのものに寄り添い、そして地域にも寄り添ったキャリア教育を可能にしています。
茨城県での活動の拠点Tsukuba Place Labで代表の堀下さんと打ち合わせ。
イノライブの見つめるビジョン
「心の豊かさを感じるために、自分にとって大切なこと」。私たちはこれを“価値観”と呼んでいます。そしてこの“価値観”を見つけることで、学生たちは自分なりの軸を持って人生を歩むことができます。しかしこの選択の多くは、実際には10代半ばの段階から行われていることをご存知でしょうか?
イノライブがこれまで4年間に渡りプログラムを提供している山梨県立富士北稜高校は、商業系と工業系からなる総合高校で、1年生の終わりには専門科目を選択します。私たちは、この段階で彼らが自分の軸を形成できるようプログラムを構成し、最終的には卒業までの3年間を通して自らのライフデザインを設計し、“価値観”を見出せることを目指しています。
学生と同じ目線でディスカッション中。学生とつくばの可能性を感じた。
茨城県と関わり始めたきっかけ
過去の活動を通して培った気づきや学びを応用し、今後さらに活動を発展させていきたいと思っていました。
山梨県での活動時、私たちの考え方やビジョンに賛同してくれる大学生や大人、延べ200人以上が活動に参加してくださいましたが、山梨まで足を運ぶのはそう簡単ではありませんでした。その点、茨城県つくば市は都心からのアクセスが良好で、筑波大学の学生や現地の企業・団体との接点を作ることができればこれまで以上に充実したプロジェクトを運営できるという確信があり、本プログラムへの参加を決意しました。
茨城県でのプロジェクトには大きく2つの目的があり、まず1つは先ほどの富士北稜高校で行なっているキャリア教育を「大人から学生へのワークショップ」としてつくばの学生にも実施していくこと。学生たちの視野を広げ、キャリアを考えるきっかけになってほしいと願っています。
そして2つめは、実際に企画・運営を通じてより学びを深めるという目的で、県外の大人を対象に、つくばの魅力を体験するツアーを学生自ら企画してもらうプロジェクトで、目下進行中です(2018年12月現在)。
イノライブメンバー内で茨城で仕掛けていくことを話し合った。
本プログラムにおける最終目的
茨城県の魅力を県外の大人に発信することで移住促進に繋げるのはもちろんですが、学生が主体的にプロジェクトを進めていく中で、必然的に地域住民や企業、団体との繋がりができ、当事者意識が深まっていくと思います。それにより、自分の居場所ができ、地元の学生が茨城県に住む動機付けや、将来的なUターン意識の醸成をできたらと思っています。
また、私たちイノライブとしては、茨城県の高校をはじめとした教育団体との新たな繋がりができることを期待しています。様々な学生と出会い、豊かなキャリア教育を進めていきたいです。
イノライブ・学生・つくばの企業(Tsukuba Place Lab)のみんなの集合写真
- イノライブ(一般社団法人社会創発塾)
- 業種:教育
- 所在地:東京都千代田区
キャリア教育団体であるイノライブは、これまで高校生を対象にキャリア教育プログラムを推進してきた。今回のプロジェクトでは、茨城県の学生に対するキャリア教育と、その過程で茨城県外の大人に対し、県の魅力を発信する活動を行った。活動の狙いは、地元の学生が茨城県に住む動機付けや、将来的なUターン意識の醸成、また県外在住者がイベントに参加することによる関係人口を増やすことだ。活動のキーマンとなった地元企業の代表と共に、今回のプロジェクトの成果と今後について語る。
- 山崎 奈央 様
- イノライブ
(一般社団法人社会創発塾)
- 堀下 恭平 様
- 株式会社しびっくぱわー
代表取締役社長 / コワーキング
スペースTsukuba Place Lab代表
- 山森 達也 様
- イノライブ
(一般社団法人社会創発塾)
大人を身近に感じるキャリアプログラムの提供
ープロジェクトではどのような取り組みを行いましたか?
ー2つのプログラムを詳しく教えてください。
- 山崎
ひとつめのプログラムは、大人が自分のキャリアを棚卸しして、どんな価値観を大事にしているのか、それによって今どんな仕事をしているのか、という自分の経験や考えを学生に話してもらいました。学生自身も自分のこれまでの経験を振り返って、大人に対して自分の考えや大事にしていることを共有することを通し、自分の価値観や強みを深めていくというプログラムです。この体験は学生にとっても大人にとっても新鮮だったようで、事後アンケートには両者から「自分の価値観を深掘りできた」「自分を見つめ直す機会になった」、さらに学生からは「”働く”は一種類ではないと知った」といった声がありました。特に就職活動中の学生にとっては、働くことを考える良い機会になったと思います。社会人と話せる機会がなかなかない学生にとって、大人も自分たちと同じ子供や学生の延長線上にあるのだということに気づきが得られたり、多様な人の生き方や価値観に触れることを通して、県内でのキャリアへの関心の広がりもあったようです。
- 山森
ふたつめのプログラムでは、『つくばの無駄な時間を過ごす心地よさ』をコンセプトに、県外の大人向けのツアーを学生に企画・運営してもらいました。このコンセプトそのものも、学生が考えたものです。コンセプトづくり、地域の魅力探し、ツアープラン作成・テスト、当日運営、振り返りまで10月から4ヶ月程定期的にミーティングを重ね、学生がアイデアを出しながら我々も並走する形で行ってきました。学生にとってはこの活動を通して、初めて出会ったメンバーでどのようにプロジェクトを進めていくのか、チームワークや個人の得意なことと苦手なことについても考える機会となったようです。
- 山崎
ツアーでは、炊きたてのごはんを持って養鶏農家に行き、生まれたての卵を自分たちの手でとって新鮮な卵かけご飯をいただいたり、他にも『パンの街』として有名なつくばで、学生と大人のグループでパン屋巡りもしました。ツアーを実施するにあたり地域の方々にも協力をいただいたのですが、学生が全て相談から当日のアレンジまで実施し、この活動を通し自主的に地域との関わりをもっていました。
「学生と県内外の大人双方にとって学び合う場になっていたようで、とても嬉しかった」と語る山崎さん。
キーマンとの連携で学生や地域と更につながる
ー茨城県の企業とはどんな連携をしたのですか?
- 山森
Tsukuba Place Labさんと連携させていただきました。つくばに来て右も左もわからない僕たちに対し、自身も筑波大学出身であるTsukuba Place Labの堀下さんがキーマンとしてサポートしてくれました。場所の提供や学生とのコネクトを始め、集客と言う観点からも心強いサポートを受けることができました。
- 山崎
堀下さんには学生目線のアプローチのノウハウや、様々なキャリアを伝えるイベントに向けて、県内で活躍されているキーマンや教育関係者との接続の面でもサポートをいただきました。そういった点でもとても心強かったですね。
「初めてつくばに来た時は右も左もわからなかった」と笑う山森さん。
ー今回のプロジェクトで苦戦した点はありますか?
- 山森
苦戦した点としては、やはり集客の部分です。学生のスケジュールや学生のやりたいことを、肌感として理解しきれなかった部分があります。イノライブとしても学生と並走するプロジェクトは初めてで、距離感や関与の仕方には試行錯誤しました。
- 堀下
僕としても、イノライブさんの想いに共感し一緒になって楽しんでくれる学生にどう届けたらいいのか、迷ったのもまた事実です。誰にどうプロジェクトに関わってもらうのか、そのためにどうアプローチすべきなのか、僕にとっても新たなチャレンジでした。
- 山崎
茨城県内で活動するプロジェクトでありながら、活動地域である茨城県のリソースや県の課題等についてやや知識が不足していた点はあったと思います。堀下さんのご協力はいただきつつも、もう少し我々自身が地域の状況を事前に掴むことができていたら、企画の内容や効率面でもよりよい状態がつくれたかもしれません。
「最初のうちはどう価値共創したらいいのか迷いもした」と語る、Tsukuba Place Lab代表の堀下さん。
茨城県で生まれた新たな発展
ー今回のプロジェクトを通して新しい気づきはありましたか?
- 山森
今回のプロジェクトに参加してくれた学生の中で、筑波大学の中で「イノライブの教育プログラムを自主的に続けていきたい」と言ってくれる学生が現れました。
もともと教育に興味があった学生ですが、大学生の内にイノライブの子組織のようなものを作って、自分が卒業した後もこのキャリア教育プログラムが続くような仕組みを作りたい、と言ってくれています。
今後もイノライブの取り組みとして、関わった学生が何か一歩を踏み出してくれること、そしてその学生に巻き込まれて周囲の学生が新たな一歩を踏み出してくれる。そんな連鎖の最初のきっかけになりたいと思っています。
- 山崎
イノライブとしても今後、茨城県の学校や教育団体に向けてキャリアプログラムを通して茨城に関わっていきたいと模索していた中で、このような形で活動の広がりが出てきたことはとても嬉しいです。
そのプロジェクトチームの名称が、「茨城」と「イノライブ」をかけて『イバライブ』なんです。すごく嬉しいですよね。
- 堀下
僕も『イバライブ』の立ち上がりは本当に嬉しかったです。こうやって主体的に動いてくれる学生たちがより動きやすくなる体制作りをこれからも模索し続けていきたいです。そしてサポートする僕たちやイノライブのように茨城にかかわってくださる方々が、より学生をサポートしやすくしたいと思っています。
- 山森
チームとしての土台は今回のプロジェクトを通して築くことができたと思っています。このプロジェクトきっかけとして、今後もつくばや茨城に関わり続けたいと思います。
チームとしての土台が築け、これからの可能性を感じる3人
今回のプロジェクト内容は、大きくふたつあります。ひとつめは、学生に対し、県内外の大人との対話やワークを通じたキャリアプログラムの提供です。そしてもうひとつは、学生により、県外から来た大人に対してつくばの魅力を発信するプログラムです。基本的には学生が主体となって地域の魅力を体験するツアーを作り上げ、僕たちはサポート役に回るというイメージです。