【平成30年度 成果報告会②】 ローカルで実現するビジネス拡大
3月6日につくば市で行われたイベントに続き、3月13日に東京で茨城県 トライアル移住・二地域居住推進プロジェクトの成果報告会が開かれました。会場となったオープンコラボレーションスペース LODGEには様々な立場の方々が駆けつけて、ローカルでのビジネスの可能性に熱い視線を向けました。
サマリー
イベントの前半は茨城県 トライアル移住・二地域居住推進プロジェクトに参加した2社からの事例レポート。受け入れた茨城県側の方々も登場し、反省点も含めてプロジェクトの成果が語り合われます。後半は、茨城県の各地で活躍するキーマンの方々が登壇。それぞれの取り組みとどういう人材を求めているかを発表し、茨城が様々な面で動き出していることが強く伝わりました。
18:35 事業説明
茨城県政策企画部計画推進課の小森学さんのあいさつからのスタートです。地方創生、人口減少対策に取り組んでいる地域は多くありますが、茨城県としては市町村単位ではなく、県全域をフィールドととらえ、各地のキーマンとつながってプロジェクトを進めているところに特徴があるそうです。また、地理的に東京に近いことから東京と茨城に2拠点を構えた複業ワーカーとの連携もあるとのことでした。
続いて、茨城県 トライアル移住・二地域居住推進プロジェクトの運営推進を担当するパーソルプロセス&テクノロジー株式会社の森啓亮さんからの事業説明です。今年度のプロジェクトがビジネスマッチングを目指した事業に進化したことなどの紹介がありました。この日のイベントに関しては、「地方創生を進める他の自治体からも注目される茨城で何が起きているのか、そして東京圏の方々でも茨城で活躍するチャンスがあるといったことを知っていただきたいです」と語りました。
18:50 事例発表1
平成30年度の茨城県 トライアル移住・二地域居住推進プロジェクトに参加した企業の事例発表が行われました。まずは、茨城の農業の問題の解決に人工知能(AI)の技術で挑んだ合同会社ヘマタイトの茨木隆彰さんと、受け入れた側の結城商工会議所の野口純一さんの登壇です。モデレーターは茨城移住計画の鈴木高祥さんです。
合同会社ヘマタイト 代表社員社長エンジニア
茨木 隆彰さん
神戸市立工業高等専門学校 電子工学科を卒業。学生時代より株式会社オプティムやゲヒルン株式会社などにてソフトウエア開発の腕を磨く。2016年に”人とコンピュータのよい関係をつくる”事業を推し進めるため合同会社ヘマタイトを創業。人工知能も含めた受託開発を中心に、CTFKitなどの情報セキュリティ教育ソリューションを展開中。
結城商工会議所
野口 純一さん
茨城県古河市出身。コワーキングスペース「yuinowa」を運営。「結いプロジェクト」を立ち上げ、「結い市」や「結いのおと」などを展開、結城市の人、もの、縁を繋ぎ、新しいプレイヤーを結城に導くための活動をしている。
茨城移住計画発起人 / 株式会社カゼグミ 代表取締役
鈴木 高祥さん
茨城県水戸市出身。ファシリテーションとソーシャルデザインの企画・プロジェクト進行が生業。2017年に茨城県外の人と県内のキーパーソンをつなぐ、茨城移住計画を立ち上げ、本格的な多拠点活動を開始。
トライアル企業へ
ープロジェクトでの具体的な取り組み内容は?
受け入れ側へ
ー地元企業とのマッチングにあたってどういうことを考えましたか?
- 結城商工会議所
野口 もともと別の事業で宮崎協業さんにご協力いただいた関係で、「ネギの選別をもっと簡単にできないか」といった課題がある事について知っていました。また、宮崎協業さんは効率化を重視した大規模農業に取り組んでいて、ドローンで除草剤を撒いたり、トラクターの耕運にGPSを使ったりと最新技術を農業に活用していたので、県からこのプロジェクトの話を聞いてヘマタイトさんを紹介していただいたときに、宮崎協業さんとうまくつながるのではないかと考えました。
トライアル企業へ
ー開発にあたって金銭的な部分やスケジュール的な部分で苦労した点は?
- ヘマタイト 茨木
金銭的な部分に関しては予算をいただいて、その中でできることをすり合わせました。スケジュールに関しては正直に言うと厳しかったですね(苦笑)。最初に現地に行ったのが9月ぐらいで、12月ぐらいまでにはモノが仕上がっていけないというスケジュールでした。
- 茨城移住計画 鈴木
通常であれば開発にはどのぐらいかかるものなんでしょうか?
- ヘマタイト 茨木
僕らの場合は短納期で作ることが多いので、うちの会社のスピード感で言えば半年ぐらいかなと思うんですけど、一般的には1年ぐらいじゃないでしょうか。また、技術は作って終わりではなくて作ったものがどのぐらいワークするか見定める期間や、使っていただいた上で「こういう機能があったほうがいい」「この機能は邪魔」という反応もあると思うので、そういったことを検討する期間も必要じゃないかと思います。
受け入れ側へ
ー受け入れ側としての今後の展望は?
- 結城商工会議所
野口 今後、商工会議所としても、こういう課題を解決できるプロジェクトが始まりましたということを広く告知しながら協力企業さんを募っていきたいですね。課題が見えやすい結城の企業さんから始めて幅を広げていきたいという段階ですが、結城には結城紬があるのでインバウンドといった部分で受け皿を作ってくださる企業さんや、結城は工業もいい調子なので生産性をさらに上げてくれる企業さんに来ていただきたいです。まずはしっかりと成功事例を作りたいですね。
トライアル企業へ
ー茨城で働いた上での気付きなどは?
- ヘマタイト 茨木
普段からうちは、みんな家や旅行先で仕事したりしてオフィスに人が来ない変な会社なんです(笑)。そういう意味で結城市におうかがいして仕事することにも抵抗感はありませんでした。
- 茨城移住計画 鈴木
東京から結城市への移動は車ですか?
- ヘマタイト 茨木
ずっと自分の車で行ってました。車がないと移動にかかる時間が90分以上違いましたね。移動手段は非常に大事だと思います。うちの会社には10代のメンバーもいるので、そういう意味では、公共の交通機関といった手段が充実すればより地方に行きやすいなと思いました。
- 結城商工会議所
野口 公共の交通機関しか使えない方がいらっしゃる場合、我々のような中間の人間が首都圏の企業さんと結城の企業さんをうまくつないで、ストレスなくミッションをクリアできるようにお手伝いするのも役割かなと思います。
- ヘマタイト 茨木
今回、野口さんに宮崎協業さんにスムーズにつないでいただいて助かりました。宮崎協業さんのところまで車で片道2時間弱かかったんですが、たとえば僕らが茨城県の農業に可能性があると思っても、片道2時間かかる状況で営業に行けるかっていうと厳しいものがありますよね。そういう意味で、移動時間がかかるからこそ、現地でどれだけ効率よく活動できるかは企業人としてはシビアに見るかもと思いました。
19:30 事例発表2
続いて登壇したのは、イノライブの山森達也さんと、つくば側でサポートしたTsukuba Place Labの堀下恭平さん。今回のプロジェクトに参加したイノライブの山崎奈央さんと新莊(しんじょう)直孝さんもトークに加わります。
一般社団法人社会創発塾イノライブ 代表
山森 達也さん
2008年、神戸大学工学部を卒業後、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社を経て、情報セキュリティベンチャーに入社。その後、株式会社Indigo Blueに参画し、人材育成プログラムの企画設計と、そのデリバリーを実施している。イノライブでは「一人ひとりが人生の主人公になる」を目標に高校生を対象にキャリア教育をする活動をおこなっている。
一般社団法人社会創発塾 イノライブ
山崎 奈央さん
1984年生。東京都多摩市出身。パーソルP&T(株)にて業務コンサルに従事。個人と組織の成長で面白いことが沢山起こる社会の実現をライフワークとしている。コーチングやキャリア教育との出会いをきっかけに2017年よりイノライブに参画。授業の企画や実施、事務局運営を担う。
一般社団法人社会創発塾 イノライブ
新莊 直孝さん
茨城県出身。都留文科大学在学中に、「地域と教育」「社会とつながる学校教育」について学ぶなかでイノライブに出会い参加。2019年4月から教育関係に就職予定。
株式会社しびっくぱわー 代表取締役社長 / コワーキングスペースTsukuba Place Lab 代表
堀下 恭平さん
熊本県出身、つくば市在住。まちづくりのコンサルタントとして働きながら、2016年、つくば市にコワーキングスペース「Tsukuba Place Lab」を開設。「人と人を繋ぎ、やりたいことを実現していくための場」づくりを行なう
トライアル企業へ
ープロジェクトでの具体的な取り組み内容は?
- イノライブ 山森
イノライブは高校生などを対象にキャリア教育などをやらせていただいています。高校の授業で1クラスに大人が4人ぐらい入って、それぞれのキャリアについての対話や、ワークを通じて生徒ひとりひとりがやりたいこと、自分の価値観を見つける一歩目、きっかけ作りを支援しています。今回、我々は筑波大学の学生を対象にキャリア教育を実施したのですが、大学生を対象にしたことは初めてだったので、我々にとってチャレンジのひとつでした。
- イノライブ 山森
キャリア教育の他に、東京から呼んだ大人たちにつくばの魅力を感じてもらうツアーを体験していただいたんですが、そのプログラムを半年かけて学生たちに作ってもらいました。「無駄な時間を過ごす心地よさ」というコンセプトを学生たちが考えてくれて、養鶏所で生みたての卵で卵かけご飯を作ったり、つくばはパンが有名なのでパン屋をめぐって自分の好きなパンを見つけるなどという、つくばの魅力を発見するプログラムを半日から1日弱かけて実施しました。
受け入れ側へ
ー受け入れにあたってどういうことを考えたのでしょうか?
- Tsukuba Place Lab
堀下 今回、ゼロベースから始まるという意味で、受け手側の学生としては「誰が何をするの?」という感じですよね(笑)。だから、僕のほうで「この子であれば興味を持つだろう」「この子にはこの切り口から伝えよう」ということを整理しました。パーソナルな人柄の部分で一本釣りするような感じになるから、マッチングは結構大変かもなというのが第一印象でしたね。
- 茨城移住計画 鈴木
筑波大学の学生の特性はどういうものなんでしょうか?
- Tsukuba Place Lab
堀下 都内の大学との大きな違いとして、筑波大学はつくばにとどまりがちという特性はあると思います。ただ、そういう環境だからこそ情報に飢えていて自分のやりたいことに飛びつく学生たちも少なからずいます。そういう子たちにイノライブさんの活動をリーチさせたいなと思っていました。
トライアル企業へ
ー大学生たちへの最初のアプローチではどういうことを考えましたか?
- イノライブ 山森
学生からしたら海のものとも山のものともつかない団体ですし、しかも今までは高校という学生がいる場に我々が入っていく形だったんですが、今回は我々がいる場所に学生を呼び込まないといけない。最初の説明会の参加者はゼロでした(苦笑)。
- イノライブ 山崎
募集は苦戦しましたね。FacebookやTwitterも使ったんですけど、「大学生はFacebookを見てませんよ」って言われました。説明会は2回やったんですが、2回目は堀下さんに協力していただきました。
- 茨城移住計画 鈴木
学生に告知する際のポイントはどういうものでしたか?
- Tsukuba Place Lab
堀下 僕自身もイノライブさんと会ったのはこのプロジェクトが初めてなので、まずは我々の間でコミュニケーションをとるところから始めました。その上で、キャリア教育に関しては先生になりたい子などに「キャリア教育について学ばないか」というように声がけをして、ツアーに関しては観光や地域振興、文化地理学などに興味がある子たちに「つくばのツアープログラムを考えてみようよ」と、切り口を変えながら声をかけました。
トライアル企業へ
ー今回のプロジェクトにおける反省点などはありますか?
- イノライブ 山森
頭ではわかっていたけど、すごく実感したのは地域に入っていくときは“点”ではなく“面”で入っていかないといけないなということなんです。今回、堀下さんが頼りになりすぎて、つくばで起きてることやどんな人がいるかという情報が堀下さんという“点”を介してしか入ってこない。これは教訓になりました。
- イノライブ 新莊
学生チームで考えてくれる時間は多かったんですけど、僕たちがつくばに足を運んでミーティングを行なう時間にメンバー全員がそろわないとか、コミュニケーション不足の面はありました。
- イノライブ 山崎
ポジティブな面を補足すると、我々にノウハウがない部分は学生に頼ったというところもあったんです。我々が困ってるときに中心になって動いてくれる学生さんもいて、そういう形で学生側からの協力が進んだのはポジティブな面だと思いました。
- イノライブ 山森
筑波大学には「T-act」という学生が主体的に何かやりたいときに支援してくれる制度があるんですが、その中にイノライブの活動を入れたいと学生が言ってくれたんです。今後はイノライブの活動は学生主体で動きそうで、今回の活動が未来につながっていく予感がありますね。
20:05 地元キーマンによる逆プレゼン〜茨城で活動したい企業求む〜
休憩時間を挟んで、茨城の各地のキーマンの方々によるプレゼンが行われます。三者三様の地元での取り組みの紹介に続いて、「茨城ではこういうことができるから、ぜひ協力していただきたい!」という熱いプレゼンが聞けました。
株式会社フットボールクラブ水戸ホーリーホック
市原 侑祐さん
千葉県出身。2018年より茨城県に生活の拠点を置き、東京との二地域居住をしながら、プロスポーツクラブの業務に従事。現在、茨城県移住促進事業の一環であるif design projectの茨城県側の受入企業担当者として、二地域のパイプ役を担っている。
- 水戸ホーリーホック
市原 Jリーグの昨年の売上は約1100億円でした。自動車産業などと比較するとサッカークラブの市場規模は小さいです。その一方でまだまだ伸びしろがあると感じています。そんな中でサッカークラブはサッカーだけをやるのではなく、スポーツとは異なる業界や様々な市場、地域、行政と密接に関わっていく機会を作らなければいけないと感じています。今までの企業のスポンサーシップだけにとどまらず、サッカー界の外側と関わり頻度を増やし、地域のためにコミットしていきたいです。
- 水戸ホーリーホック
市原 Jリーグが開幕25周年を迎えて「社会連携」というキーワードが出てきているのですが、地元故郷で愛されるクラブになるためには社会連携の推進が重要です。今までは地域に支えられて来たからこそ、これからは地域にもっと貢献し、還元していかなければなりません。そうした中で様々な視点を持つ企業と連携しながらのスポーツビジネスのあり方を考えていきたいです。「サッカークラブでこんなことできないかな」という意見を忌憚なくいただけると幸いです。
プレゼン1
by 株式会社フットボールクラブ水戸ホーリーホック
市原侑祐さん
- Tsukuba Place Lab
堀下 「つくばをスタートアップの聖地に」をキーワードに動いています。起業家が生まれ育ち、次の起業家を育てられるようなエコシステムをつくばに作りたいと考えています。つくばには民間を合わせると150の研究所があります。人口23万人に対して博士号の資格を持つ方が8000人以上もいて、石を投げれば博士に当たる街と言われていますので、研究シーズ(種)は十二分にあります。それをビジネスシーズとマッチングさせたいと考えています。
- Tsukuba Place Lab
堀下 いろんな機関が独自でアクセラレートプログラムを始めている中で、それを街に引っ張ってくる活動を、つくば市のスタートアップ推進室などと一緒にやらせていただいています。先ほどヘマタイトの茨木さんがおっしゃっていたように農業に対してもテクノロジーがアプローチできて、そこにはスタートアップの可能性がありますし、既存の事業と既存の事業の結合でもイノベーションが起きると思っています。
プレゼン2
by Tsukuba Place Lab 堀下恭平さん
- 結城商工会議所
野口 私の職務でもある地域振興の文脈から「結いプロジェクト」という団体を立ち上げて、結城の潜在的な魅力、新しい価値観を提供できるような町おこしをやっています。結城の課題として、人材不足、特に若年層、女性が少ないんですね。結城にはまだまだ出産後復帰できるような仕事も少ないですし、コミュニティもないので、それらを自分たちで作ろうと考えています。
- 結城商工会議所
野口 次年度にクリエイターズコミュニティを作って、そこでライターなどの人材を育成し、我々、商工会議所の人間が企業のニーズに合った仕事を作っていこうと考えています。「yuinowa」という築90年の呉服屋をリノベーションしたシェアスペースでセミナーをやっている実績があるのですが、そこでクリエイター養成講座を開催します。こういった事業をやりたいので、講師としてエントリーしたい、参加したい、街づくりを一緒にやりたいという人は大歓迎です。
プレゼン3
by 結城商工会議所 野口純一さん
地元キーマンへ
ーどういう人材を求めていますか?
- 結城商工会議所
野口 コーディネートできる人ですね。自分も商工会議所の人間としてマッチングする立場としてやってきましたが、自分だけだとそろそろ引き出しの中身もなくなってきたので(笑)。いろんな角度でコーディネートできる方々が結城に来ていただけるとうれしいです。
- 水戸ホーリーホック
市原 メディアづくりに長けている人を欲しています。茨城は民放でローカル局がないですし、サッカークラブの情報は自分たちのオフィシャルサイトやSNSでしか出ていかないんです。そういうコンテンツはそもそも水戸ホーリーホックに興味を持っている人しか見ません。ですから、その外側で情報を伝えるためのメディアづくりに長けている人の力はすごく欲しいですね。
- Tsukuba Place Lab
堀下 事業開発できる人材が欲しいです。つくばでは開発人材は増えており、研究屋さんが創業社長というスタートアップがかなりあります。でも、技術者だけでは見えない世界もあって、資金調達や経営はもちろん、イベント運営企画能力や折衝の能力が必要だったり、官公庁とのやりとりも発生するので、そういった部分に長けた人がつくばに来たならば、やれることはかなりあると思います。
20:40 次年度の事業の紹介
茨城県のキーマンの方々によるプレゼンに続いて、茨城県庁の小森さんが次年度の茨城県の取り組みについて紹介しました。次年度も引き続き、東京と茨城の企業や人をつなげる活動を継続したいので、そのための中間プラットフォームを作りたいとのことでした。また、企業と企業をつなぐきっかけ作りの取り組みのひとつとして、企業合宿の誘致も進めたいそうです。「合宿をきっかけにプロジェクトやビジネスが進んでいく展開もできたらと考えています」(小森さん)
20:45 懇親会
イベントを締めくくるのは懇親会です。事例紹介やプレゼンで登壇した方々を交えて、イベントの参加者の方々が茨城のお酒を飲みつつ、会場のあちこちで語り合います。立場や世代の違う人達が交流し、アイディアの交換なども行われていました。東京と茨城をつなぐ茨城県の取り組みはこれからも続きますので、会場にいらした方々が一歩を踏み出すことを強く願います。
今回、結城市の宮崎協業さんとの取り組みを行わせていただきました。まず、宮崎協業さんの持っている課題をヒアリングさせていただいたところ、「従事者の確保をどうするか」「世代の交代にともなう技術の継承をどうするか」「海外農業との競争の中で大規模化して商品の単価を引き下げなければいけない」「その一方で高い品質を要求されている」といった課題があることがわかりました。そうした問題が表れた一例であるネギの選別に取り組んだんです。
ネギの栽培は大規模化すればコストを下げることができます。またサイズを揃えることが商品の品質として重視されるのですが、実は選別にはマニュアルがなくてノウハウが明文化できないそうなんです。だから、技術の継承が難しい。この問題に僕らは人工知能(AI)の技術でトライしました。AIであれば選別の基準を明文化しなくても、100本選別されたネギを「これはLサイズ」「これはMサイズ」と学習させていけば、働いてる方々の勘頼みのノウハウをそのままコンピュータに落とし込めるんです。プロジェクトの活動期間が約半年だったので、ネギの選別まではできましたが、まだ箱詰めさせるプロセスまでは実現できてないので、ここは将来の課題かと思います。また、今後も継続して茨城の農業の次世代化であったり、技術で解決できる農業以外の問題に取り組みたいと思っています。