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茨城のヒト・コト・バ PEOPLE, THINGS, SPOTS OF IBARAKI
地域プロジェクト
STAND
「地域でやりたいこと」に本気で向き合いながら、仲間と出会い、地域への愛着を深める実践プログラム
「地域でチャレンジしたい」「自分の企画で地域を盛り上げたい」
そんな想いを抱きながらも、自分のプロジェクトの作り方や、仲間の集め方、最初の一歩の踏み出し方が分からない、と足踏みする方も少なくないはず。
そんな中、茨城県では「小さなチャレンジが地域をつくる」をキャッチコピーにした、ローカルプロジェクトの小さなスタートを支援する学びと実践のプログラム「STAND」が昨年度に引き続き開催された。
参加者であるプロジェクトオーナーたちは、茨城にゆかりのある事務局とメンター、先輩ローカルプレーヤーの応援のもと、自分たちが思い描くローカルプロジェクトを実践。プログラムを通して、茨城で始めるローカルプロジェクトの小さな一歩を踏み出した。
茨城をフィールドにした実践プログラム
STANDは、ローカルプロジェクトの小さなスタートを支援する学びと実践のプログラム。プロジェクトオーナーたちは、全9回のプログラムの中で、講義、フィールドワーク、メンターとの面談を通して、ローカルで実践する際に必要な「地域のキーパーソン」とのつながりを得ながら、事業の作り方を学ぶ。さらに、その学びを活かしながら、茨城を舞台に自らのプロジェクトを実践していく。
プロジェクトオーナーと事務局、メンターが、STANDの期間内だけで終わらない関係性を築き、茨城での活動を継続的にしていくことも、このプログラムの大きな軸となっている。そのため、事務局とメンターたちは、茨城に縁がある方たちで構成されている。
2021年度の開催では、茨城県内外から21人が参加。「想いはあるが、どう踏み出したら良いか分からない」方から「すでにプロジェクトを立ち上げ実践している」方まで、地域への強い想いを持つ方が集まった。
約7か月間の開催期間中、プロジェクトオーナーたちは、プログラムで学んだことを基に、自分の企画するプロジェクトを磨きながら実践。協働企画や、地域のプレーヤーや店舗との連携も生まれていった。
プログラム8日目にオンラインで開催された「最終プレゼンピッチ」では、STANDの期間中に実践した成果を発表。それぞれの成果に耳を傾けながら、「小さな一歩」を踏み出したことを讃えあった。
さらに、最終プレゼンピッチでは、メンターと一般視聴者からの投票で、「NEW IBARAKI賞」1人、「STAND賞」2人、「はじまり商店街賞」2人が選出された。
NEW IBARAKI賞
審査員(メンター)による書類審査の評価と、最終プレゼンピッチ当日のプレゼンテーション審査及びオーディエンス投票の得票数により決定
STAND賞
審査員(メンター)による書類審査の評価と、最終プレゼンピッチ当日のプレゼンテーション審査により決定
はじまり商店街賞
事前の書類審査及びSTANDスペシャルサポーター企業「株式会社はじまり商店街」の一押しにより決定
今回の受賞者たち
NEW IBARAKI賞:発信力が弱いなんて言わせない!茨城発信力強化プロジェクト IBAAPI(イバアピ)
県北地域を舞台に活動。PRを必要とする個人や事業者と、取材・発信を行う人材をマッチングし、県北地域の発信力の最大化を狙う。現在、発信を担う人材としてクリエイターを育成しつつ、官民協働で発信力強化を進めている。
プロジェクトオーナー
新妻幹生(にいつま・もとみ)
プロフィール
北茨城市出身。大学卒業後は広告会社に就職し北関東を中心に飛び回るが、コロナ禍も重なり「地元茨城にHAPPYな環境を作りたい」という想いを抱くようになる。2021年度から、県内の教育機関で広報の仕事をスタート。
STAND賞:いばらきワーケーション~観光以上移住未満の体験~
茨城には、誰かに自慢できる観光スポットは無いが、誰かに誇れる豊かな暮らしがある。そんな「ありのままのいばらき」を伝える”観光以上移住未満”をコンセプトとしたワーケーション誘致策を企画。現在、水戸市、ひたちなか市、大洗町を中心に活動中。
プロジェクトオーナー
平間一輝(ひらま・かずき)
プロフィール
大洗町出身。大学で観光政策を学んだ後、観光や地域おこしの仕事に携わる。2019年に参加したif design project内で大洗町を中心に活動するチーム「大洗カオス」を結成。これをきっかけに地元にUターン。現在、大洗町の観光戦略を担う大洗観光おもてなし推進協議会に所属。
STAND賞:常陸太田市鯨ヶ丘のシンボル板谷坂で海の見える空き家を再生!banya base(バンヤベース)
鯨が丘商店街の板谷坂沿いに建つ眺めの良い物件「banya base」を活用。「心地良い“モノ・コト”に出会える場所」をコンセプトに様々なイベントを企画。地域のファンを増やしながら、「板谷坂の散財ストリート化」を狙う。
プロジェクトオーナー
阿部深雪(あべ・みゆき)
プロフィール
常陸太田市出身だが、水戸市、栃木県宇都宮市と移り住む。革職人、アウトドアガイドとして仕事をする傍ら、2020年から常陸太田市内の父の生家を「banya base」として活用を始める。2022年2月より、茨城県北起業型地域おこし協力隊。
はじまり商店街賞:「いつもの居場所がふたつある暮らし」 OURoom(アワールーム) 〜大洗での二地域居住実践をトータルサポート〜
「いつもの居場所がふたつある暮らし」をコンセプトにした、二地域居住特化型タイムシェアリング別荘を提供。コンテナハウスを使い、来街者と地域住民との交流のきっかけを作り、両者が地域への愛着を深める機会を創出する。
プロジェクトオーナー
葦原亜由美(あしはら・あゆみ)
プロフィール
水戸市出身。結婚を機に県外に移り住む。街の便利さや日々の充実感を覚えていたが、暮らしや子育ての環境に疑問を抱き、自然豊かな地域での生活を考えるようになり、OURoomの構想をスタート。2022年3月、大洗に移住。
はじまり商店街賞:店を持たない飲食店 立ちより居酒屋まんま&ひたちなか市のゲストハウス編湊(あみなと)の運営
出張スタイルの居酒屋と、ひたちなかの港町にあるゲストハウスで、週末の観光客向けに泊まれる居酒屋イベントを開催。茨城への旅の目的を作り、関係人口を創出する。自身の経験から「つまづいた人がまた前を向ける居場所にしたい」という想いを持つ。STANDの研修を通して、茨城の豊富な食の恵を活かし、食に愛着を持つ人を増やし、理想的な食の循環を作りたいという着想を得る。現在企画進行中。
プロジェクトオーナー
篠崎桃子(しのざき・ももこ)
プロフィール
埼玉県出身、茨城に暮らし約3年。かつて日立市内で居酒屋を経営していたが、店を畳んだ経験がある。それでも「人生でつまづいても、好きなこと、美味しいご飯、居場所があればなんとかなる!」と前向きな想いでSTANDに参加。
挑戦したからこそ語れる、地域プロジェクト作りの体験談
「こんな企画をやってみたい」という想いを胸に実践を重ね、見事受賞した5人のプロジェクトオーナーたち。それぞれがどんな想いでSTANDに参加し、どんなアドバイスに支えられ、どのように地域の人々とコミュニケーションを図っていったのだろうか。
受賞者たちが語る、プロジェクトが生まれた背景や、STANDでのエピソードからは、ローカルで楽しくチャレンジしていくために必要なヒントがあるかもしれない。
STANDを通して、地域の人に出会い、足りない知識を補う
まず最初に伺ったのは、STAND参加のきっかけ。今回のプロジェクトオーナーたちは、自らのプロジェクト指導にSTANDを活用した方もいれば、以前から独自に取り組みを続けてきた方もいる。
NEW IBARAKI賞を受賞した新妻さんは前者。北茨城市に生まれ育ち、高校生時代は日立市で過ごした新妻さんは、大学卒業後は広告会社に就職し北関東を飛び回る日々を過ごす。しかし、コロナ禍の影響で、茨城に暮らす大切な人たちに会いに行けない時間を過ごしながら、ゆかりのある茨城への貢献の想いを募らせていったそう。
茨城に戻ってきたのは2021年初頭。日立市内の教育機関で広報の仕事を担いながら「どうしたら茨城を面白くできるか」を模索していたさなか、STANDに出会った。
新妻さん「茨城に帰ってきたものの、地域を面白くしていくロールモデルに出会えなかったんです。何かを始めるにも、地域プレーヤーが集まるようなコミュニティに属する必要があると思い、県内の関係人口づくりにつながるような情報を調べていきました。その時に出会ったのがSTANDです」
STANDを知った当初は、具体的なプランはなく「想いしかなかった」という。それでも参加したのは、「想いだけでも参加できる」雰囲気を感じられたから。
新妻さん「Webサイトからは、まずは想いしかなくても参加して大丈夫そうな雰囲気を感じられましたし、茨城に戻ってきてから出会った地域プレーヤーの皆さんが背中を押してくれました。STANDに参加していなかったら、今回のプロジェクトは生まれなかったかもしれないですね」
一方、STANDを知る以前からプロジェクトを進めていた方の1人は、はじまり商店街賞を受賞した葦原さん。葦原さんは水戸出身で、結婚を機に県外に移り住む。街の便利さや日々の充実感を覚えながらも、暮らしや子育ての環境に疑問を抱き、自然豊かな地域での生活を考えるようになった。そこで、夫婦で今回のOURoomのひな形となるプロジェクトを作っていた。
構想を練りながら茨城に足を運んでいた際、大洗を中心に活動する地域プレーヤーとの出会いから、STANDの存在を知ったそうだ。
葦原さん「STANDを知る以前からプロジェクトを進めていましたが、事業を進めていくうえで必要な知識を得たり、人のつながりを作ったりすることに期待していました。また、同じ地域で活動する人たちと一緒に連携して、お互いのプロジェクトを盛り上げられたら面白いかもしれないと思いました」
中には、かつて挑戦していたプロジェクトを畳んでしまった経験を持つが、STANDでの学びを糧にリトライしようとする方もいる。
葦原さんと同じくはじまり商店街賞を受賞した篠崎さんは、かつて日立市で飲食店「立ち寄り居酒屋まんま」を経営していた。しかし、コロナ禍の影響を受け、閉店せざるを得なかったそうだ。当時を「経営の経験が無かったのに、自分のお店を持ててしまった」と篠崎さんは振り返る。
茨城の食を中心にしながら、人と人が出会える場所を継続的に運営するための知識が欲しい。そんな想いを持ちながら、篠崎さんはSTANDに参加。
篠崎さん「私には、地域の中に繋がりをつくったり、マーケティングを意識しながら経営を考えたりする視点が欠けていました。STANDの講義や実践の中で、私の足りない部分を補えると思い参加しました」
メンター、地域、STANDの仲間の力を借りながら前進
それぞれの想いを抱き挑戦を始めたプロジェクトオーナーたち。STANDのプログラムを受講しながら、自分たちのプロジェクトを前進させた。
「最初は何から始めればよいか分からなかった」と振り返るのは新妻さん。だからこそ、最初は「講義を我が事として聞く」ことからスタートしたそう。
新妻さん「企画や想いは自分なりにまとめていましたが、実際に地域で動くにはどうしたらいいか分かりませんでした。なので、まずは講義を聴きながら、自分のプロジェクトの甘い部分の把握を意識的に行いました。すると、メンターや事務局メンバーの誰に相談すればいいかも見えてきたんです」
メンターや地域プレーヤーに積極的にSNSでメッセージを送り、面談をしながら、プランの整理や具体的なアクションの計画を行ったそう。
自らの企画を磨いていく傍ら、他のプロジェクトオーナーと協働のフィールドワークにも参加。県北地域で活動するプロジェクトオーナーたちが声をかけてくれたところに、新妻さんは積極的に巻き込まれていった。地域への想いを胸に活動する人たちと一緒に動いたからこそ、地域の声を聞けたと振り返る。
新妻さん「他のプロジェクトオーナーと協働で、県北地域に住む人の声を伺いながら、市場調査のような取り組みができました。実は『自分のプロジェクトは独りよがりかもしれない』と不安に思っていたんです。それでも、ヒアリングしながら『そのプロジェクトいいね!』と言っていただけたのは、励みになりましたし、まさに一歩目を踏み出せた気持ちになれました」
一方、STAND賞を受賞した阿部さんは、プロジェクトの枠組みがある程度できており、地域のキーマンたちともつながっていた。そこで、地域のイベントとの連携からスタート。
阿部さんの運営するスペース「banya base」は、茨城のビジネス創出と地域活性化を目指すプロジェクト「茨城県北ローカルベンチャースクール」に参加した際に生まれた場所。父の生家をリノベーションし、「心地良い“モノ・コト”に出会える場所」によみがえらせる。
阿部さん「地域のアートイベントに合わせて、写真展を開催しました。banya baseのすぐそばにある寺院の、落慶祭の写真を中心に展示。まずはこの場所に来てもらい、眺めのいい部屋を見てもらいたかったので、事業性よりも、発信に重きを置いた企画でした」
その後、banya baseをイベントスペースとして貸し出し、個展やお菓子の販売、ヨガを開催。STANDの開催期間に110人もの来場者を集め、banya baseの存在を周知していった。
活動を続ける途中、「地域からの期待」を重荷に感じてしまうこともあったそう。そんなときに、メンターからのアドバイスで、「自分が気持ちよく取り組める事業」の大切さに気づいたそうだ。
阿部さん「地域から期待していただけるのはすごく嬉しいです。ですが、自分がその期待にどれだけお応えできるんだろう?と不安もありました。せっかく地域から声をかけていただいても、その縁をうまく活かせないのは申しわけないですしね。そんなとき、メンターさんのアドバイスから、自分にとって丁度いい負荷をかけながら取り組む姿勢が、活動を継続するために必要だと気づかされました。『まずは自分がやりたいことに挑戦しよう』という気持ちになれましたね」
手の届く場所から、想いを共有できる仲間を集める
ローカルプロジェクトをより魅力的で継続的な企画にするために欠かせないのが、想いを共有できる仲間や、地域の協力者。STAND賞を受賞した平間さんは、プロジェクトに共感してくれた人たちの存在について話してくれた。
平間さんのプロジェクト「いばらきワーケーション」は、水戸、大洗、ひたちなかを舞台にしたワーケーションを提案する。大洗の企画を担当する平間さんに加えて、水戸とひたちなかを担当する二人が、コアメンバーとして活動中。三人は、「自分たちが今いる地域のポテンシャルをもっと引き出していきたい」という共通の想いを抱いているそうだ。
平間さんがコアメンバーを集める際に行ったのは、「しっかりと自分の想いを伝えること」。
平間さん「ローカルプロジェクトに興味があり、一緒に活動できそうな人たちに、『地域の暮らしを伝えたい、今ある地域資源を活かしていきたい』と、いばらきワーケーションの話をじっくり伝えました。本気でやりたい企画だからこそ、自分の想いを伝えるのは『否定されたらどうしよう』と不安もありましたね。でもまずは、自分のビジョンとミッションをしっかり伝えて、同時に『相手が地域に対して何をしたいのか』もしっかりヒアリングしました」
コアメンバーとして協働してもらうためにも、その人独自に取り組んでいる企画とのコラボレーションの可能性や、無理なくいばらきワーケーションに参加できる余白をもっているかも意識したそう。
何人かの知り合いに声をかけた結果、いばらきワーケーションに共感すると同時に、自分のやりたい企画を活動に絡めながら参加したいと声を上げてくれたのが、コアメンバーの二人だ。
さらに、いばらきワーケーションでは、地域で活動する個人や店舗にも協力を仰いでいった。もともと、平間さんたちが活動する地域には、独自に活躍する個人や店舗が存在する。さらに、それぞれが顔見知りであり、「みんなで企画をつくれたら面白そう」と想いながらも、実行まで至っていなかったそう。しかし、平間さんたちがビジョンを伝え、企画に巻き込み、コラボレーションが実現。
身近な地域の人々を巻き込んだ背景には、メンターからうけたアドバイス「身の回りの人から巻き込んでいこう」がある。実は、平間さん自身、計画の初期段階は、いばらきワーケーションを大きく展開したいと計画していた。
平間さん「最初は、県内や都内の企業にも参加のアプローチを予定していました。でも、メンターから『失敗したときの痛手が大きいし、結果的に残るものも少ないのではないか』とアドバイスをいただいたんです。すでにワーケーション企画に取り組んでいた地域プレーヤーからも、『軸は押さえながらコンパクトに実行するからこそ、関わった人みんなが幸せになれる』と教えてもらったんですよね。そこから、自分の手の届く範囲のエリアとつながりの協力を活かした企画づくりにシフトしました」
自分を知ってもらうことが、地域と縁を深める第一歩
二地域居住を実践する場所、OURoomを作る葦原さんにとっても、地域の協力は欠かせない。街を訪ねる人たちにとって、その街への親しみに関わる要素の一つが「地域がどのように迎えてくれるか」。
葦原さん「企画を始めたころは、単に二地域居住に特化した施設を提供する企画として考えていました。ですが、講義を受けながら、ただ施設を作るのではなく、滞在者と地域の人達それぞれが、地域への愛着を深める機会が生まれる場所にしたいと思うようになりました」
STANDの中で葦原さんが心を砕いたのは、地域の人たちへのプロジェクトの説明。事業概要より前に、自分の人となりから伝えていったそう。
葦原さん「地域の方にOURoomの説明と挨拶に伺った際、いただいたご質問に対して伝えたい内容を正しく伝えられず、不安を煽ってしまうことがありました。そこで、まずは私や家族を知ってもらおうと努力しました。趣味の料理、大洗の暮らしへの憧れなど、人となり、歩んできた道のり、事業の背景や想いを丁寧にお伝えすることを心がけました。その積み重ねで会話が膨らみ、少しずつ地域から共感してもらうきっかけになったと思います」
想いを語り、熱を伝える
出張式居酒屋でのイベントやゲストハウス運営で関係人口の創出を目指す篠崎さんは、STAND期間中に開催したイベントの来場者と想いを語り合い、プロジェクトに取り組む熱意を広げていった。
篠崎さん「メンターの一人が、イベントをたくさん開催している方で、『集客ゼロのときもあったけど、それでも続けて、参加者にどんどんヒアリングをした』とおっしゃっていました。イベントをやるなら、私もそれぐらいの意気込みが必要だと感じました」
STAND期間中は、以前から篠崎さんが携わっていたゲストハウス「編湊」で、毎週土曜日のイベント開催を目標に活動。来てくれた1人1人と良い関係性を作り、立ち寄り居酒屋まんまや編湊、そして茨城の食を軸にした企画に何を期待しているか、耳を傾けていった。
篠崎さん「来てくれた方たちに私の熱い想いを話すと、相手も『実は自分もこんな企画を考えていて』と想いの丈を話してくれる。会話から生まれた熱が伝わると、自分の夢を実現するための支えになるし、同志が増えていくような気持ちになる。『口だけ』と言われるのを恐れて、想いや理想を胸の内にしまっておくことは多いと思います。でも、どんどん外に伝えていけば、自分のプロジェクトや事業を前進させる熱が生まれ、周りにも伝わってくのかなと思いました」
プロジェクトを通して、地域への愛着を深める機会
STANDが開催されていた約7か月間、学び、仲間をつくり、企画のブラッシュアップを進めながら、地域プロジェクトを実践してきたプロジェクトオーナーたち。
新妻さんは、「本気で向き合ってくれる人たちが集まる部活動のような場所だった」とSTANDを振り返る。メンターや事務局が、アドバイスだけでなく本質を突いた意見を言ってくれたことは力になったそう。
新妻さん「STANDの7か月間は、自己内省の期間でもありました。気持ちだけでプロジェクトを立ち上げても、企画の表面的な話しかできなければ、『結局何がやりたいの?』と言われてしまうんですよね。だからこそ、自分自身の内側に『何をやりたくて何を達成したいのか』を常に問いかけていきました。そしてメンターや事務局のフィードバックを受けながら企画を磨いていくうちに、自分の言葉で語れるようになっていきました」
「地域への愛着を深める機会だった」と語るのは葦原さん。葦原さんにとって、愛着は人や地域との交流から生まれるもの。近隣住民にOURoomの説明を行った際も、葦原さんと地域との間に生まれた愛着は、少しずつ深まっていったのではないだろうか。
葦原さん「地域の人たちとの理解や関係性が、STANDを通して深まったと思います。OURoomを、一度訪れた人が『またあの街に行きたいな』と思えて、私たちや地域の人も『おかえり』と迎えたくなる想いが深まる場所にしていきたいです。ここに関わる人たちが、街への愛着を一層深めていけたら嬉しいですね」
受賞者たちの新たな展開
STANDは全9回のプログラムを完了したが、プロジェクトオーナーの活動は、これから本格的に始まっていく。最後に、今回ご紹介した5人が予定中の、これからの展開についてご紹介する。茨城に関わるきっかけを探している人は、ぜひ声をかけてみてはいかがだろうか。
発信力が弱いなんて言わせない!茨城発信力強化プロジェクト IBAAPI(イバアピ)
ひたち若者かがやき会議 note/Facebook/Instagram/Twitter
STAND開催期間中、新妻さんは、日立市の女性若者支援課が主催する「ひたち若者かがやき会議」にコアメンバーとして参加。その中で企画運営されるプロジェクトとして「茨城発信力強化プロジェクト IBAAPI」を進めていくことになった。
行政とともに進めるプロジェクトは、地域に対してより強いインパクトを与えられるはず。この展開の背景には、事務局スタッフからの「行政の課題解決と連携できれば、より大きな取り組みにつながる」というアドバイスがあったそうだ。
新妻さん「情報発信に関しては行政も課題を持っていると思うので、協働することでプロジェクトも加速していくと思います。でもそれは、私一人の想いだけではなく、日立市の課題ともしっかり向き合っていく必要があります。クリエイターを育て発信力を強化するというプロジェクトの軸を大切にしながら、地域を元気にし、プロジェクトに関わる人もワクワクできる企画にしていきたいです」
STANDを通し、「地域で生きるための、人の繋がりと、私自身の覚悟が持てました」と語る新妻さん。今後の展開が楽しみだ。
いばらきワーケーション~観光以上移住未満の体験~
平間さんは、これからプロジェクトを続けていくうえで、協力してくれた人たちそれぞれが抱いている気持ちを大切にしたいと話す。
平間さん「想いを共有できる仲間とプロジェクトを進めてきましたが、『想い』だけで続けると、メンバーも疲弊してしまうと思うんです。だからこそ、いばらきワーケーションのために集まってくれた人たちとは、それぞれのできること、やりたいこと、やりたくないことを含めて、どんな想いを持っているのか、しっかりコミュニケーションをとりたいです」
これから、いばらきワーケーションがビジネスとして成立していけるよう、少しずつプロジェクトを前進させてゆく。親子やビジネスパーソンに向けたワーケーション企画も準備中だ。
平間さん「ターゲットを絞りつつも、内容を濃くしたツアーを計画しています。まずはじっくりと、収益化できるビジネスモデルを構築していきたいですね」
いばらきワーケーションチームは、地域資源を最大限に活用し、茨城を訪れた人たちに記憶に残る時間を提供するプロジェクトを作っていくだろう。
常陸太田市鯨ヶ丘のシンボル板谷坂で眺めの良い空き家を再生!banya base
阿部さんは、「適度に自分に負荷をかけるけど、無理をし過ぎない」としながら、月2回のペースでbanya baseを使ったイベント開催を続けていきたいそう。
というのも、banya baseの取り組みを一過性で終わらせたくない想いと、この場所のファンを作り、クラウドファンディングの成功を目指しているからだ。
阿部さん「banya baseは築約50年の物件。現在、電気以外のインフラが使えない状況ですし、1階部分の床がゆがんで、畳が上手くはまらない状況なんですよね。banya baseに訪れた人たちみんなに気持ちよく使ってもらいたい。応援してくれるファンを増やし、クラウドファンディングを成功させ、物件の修繕を行いたいです」
現在、2023年の本格オープンに向けて計画を進めている。banya baseの盛り上がりは、鯨が丘商店街にさまざまな人々が集うきっかけになるはずだ。
「いつもの居場所がふたつある暮らし」 OURoom 〜大洗での二地域居住実践をトータルサポート〜
公式サイト/Facebook/Instagram/Twitter
葦原さんは、OURoomのオープンに向けて、さらに準備を進めていく。やるべき仕事は多いが、まずは地域の説明をしっかり進めていきたいそう。
葦原さん「私たちの取り組みについて、地域への説明は、まだまだ不十分だと思います。しっかりと説明しながら、街の皆様と良いつながりを作っていきたいですね。設備を整えるだけでなく、OURoomと地域との関係性を豊かにしていくことで、滞在してくれる方たちが、本当の意味で大洗での二地域居住を楽しめるのだと思います」
さらにOURoomでは、いばらきワーケーションとの連携も予定中。葦原さんのプロジェクトは、茨城の暮らしに出会う入口になるかもしれない。
店を持たない飲食店 立ちより居酒屋まんま&ひたちなか市のゲストハウス編湊の運営
編湊 公式サイト/Facebook/Instagram/Twitter
立ちより居酒屋まんま Facebook/Instagram/Twitter
篠崎さんの企画は、場に集まった人たちと語り合い、関係性を生み出していくプロジェクト。コロナ禍の終わりが見えない中でのイベントになるので、リアルとオンラインを掛け合わせながら実行に移していきたいと話す。
篠崎さん「地域の農家さんや飲食店、酒蔵とコラボレーションした、茨城の『食』から始まる交流企画を予定中です。私の企画はお酒や食事が関わるので、リアルな場でイベントを企画するときは、感染対策をしっかり講じなければいけないし、場合によっては開催を控える必要もあります。それでも、イベント自体は継続していきたいので、オンライン開催も計画中です。ラジオ番組や、YouTube配信などを通して、いろいろな方と出会い、想いや熱を伝え合う機会を作りたいですね」
オンラインイベントでは、プロジェクトオーナーたちとのアフタートーク番組も検討しているそうだ。茨城でチャレンジしたもの同士が再び想いを語り合い、新たなチャレンジが生まれるかもしれない。