茨城のヒト・コト・バ PEOPLE, THINGS, SPOTS OF IBARAKI

菅原広豊さん

PEOPLE

茨城移住計画

菅原広豊さん

参加者と場の熱量を意識した、継続的なコミュニティづくり

茨城県に興味がある。面白い人にたくさん出会ってみたい。でも、誰に相談したらいいのか分からない。そんな方は、菅原広豊(すがわら・ひろと)さんに会いに行ってみてはどうだろうか。彼は、「ヒト・コト・バ」を、ときにライトに、必要ならディープに結び付けてくれるコミュニティデザイナーだ。

菅原さんは、県内の様々なところで人や組織と交流を持っている。生まれも育ちも茨城県かと思いきや、実は秋田県出身。5歳のころからラグビーに取り組み、ラグビー1部リーグで活躍する流通経済大学への進学をきっかけに、茨城県にやってきた。

就職後も茨城にとどまりラガーマンとしての活動を継続するも、28歳のときにラグビーを引退。「それまでラグビーにぶつけてきたエネルギーをどうすればいいのか?」と考えたときに、当時通勤ルートだった日立市の「銀座通り商店街」がシャッター街になっている様子に気づく。そこから、この街をどうにかしたいという思いに駆られてコミュニティづくりの活動をスタート。

現在、茨城県内の企業に勤めつつも、「ヒト・コト・バ」をつなげる、テーマの異なる4つのコミュニティを立ち上げ、運営している。

気軽に参加できる、地域×教育をテーマにしたコミュニティ「ヒタチモン大學」。

情熱と志を持った人たちが集う招待制コミュニティ「まぜるなキケン」。

昔大切にされていた物や職人の技術が光るものを、もう一度復活させるチーム「時由地材JIYUDIZAI」。

スポーツをきっかけに茨城と東京をつないでいく「茨城移住計画」。

ヒタチモン大學第一回目の様子。2013年11月、JR日立駅で開催された


イベントやコミュニティに参加した方は、その場から単なる「情報」以上のものを持って帰りたいと思うはず。現場で味わう体験、参加者との交流の中で生まれる人脈、会場で沸き起こる熱量。仕事のきっかけや課題解決のヒントを探している人もいるだろう。

そんなときに、関わってくれた人たちが継続的なつながりを作れるよう、準備段階から気を配ってくれるのが、菅原さん。どんな思いや意識で、コミュニティを運営しているのだろうか。

時由地材 JIYUDIZAIキックオフイベント「大工の宝物」。ガレージ掃除中の休憩時間。参加者とお茶を飲みながらほっと一息


「隙間」を見つけて埋め合わせる

菅原さん「ラグビーをやっていたときも、隙間やクセを見つけるのが得意だったんです。スポーツでは弱点になる部分。そういうのを見つけていく僕って、ほんとは嫌なやつなんですよ。でも、地域を見たときにも『隙間』がたくさん見えたんですね。たとえば、『東京で暮らす人と、茨城で暮らす人の間にある隙間を埋めるきっかけを作る』ということでやっているのが、茨城移住計画です」

自分を「嫌なやつ」と言うが、菅原さんは、落ち着いた厚みのある声で話してくれる。嫌なやつどころか、むしろ信頼感を覚える。

隙間ってなんだろう?と思っていると、違う形で説明してくださった。ここで見せてくださったのが、菅原さんが中学3年生のころに作った立体作品。このなかに、菅原さんのコミュニティデザインの基礎が表れているという。

「タイトルは、本当は「自由と制約」なんですけど、クラスのみんながカタカナの名前を付けていたので、恥ずかしくて「ハリケーン」にしていました」


菅原さん「この作品が、僕のコミュニティデザインのフォーマット。関係性・階層・レイヤーなどの渦が、どういう波紋の形に広がっているか、というのを頭の中で描いて「隙間」を見つけるんです」

隙間を見つけ、適切に埋めて繋いでいけば、波紋のように滑らかに関係性を広げていくことができる。菅原さんは、コミュニティをつくるときに、そんな様子を思い描いている。

師匠の背中から学んだコミュニティデザイン

隙間を見つけ、そこに必要なものを埋めていく。しかし、理屈ではわかっていても、様々な要素が絡み合う「コミュニティづくり」を効果的に実行していくには、現場での経験を積み重ねが必要なはず。

菅原さん「転職して営業の仕事に入った25歳のとき。そこで僕の、コミュニティづくりの師匠ともいえる人に出会うんですね。師匠は、社内・社外にあるチームをいかに関係性を維持するか、ということに注力していました。僕はその業務引継ぎをすることになっていたので、師匠の背中を見ながら学んでいったんです」

他人のことを考え抜いて、どうやってその人に良いものを提供すればいいのかを考えながら仕事をしていた、と語る菅原さん。ここでの学びと経験は、その後に始まる4つのコミュニティづくりにも活かされている。

ヒタチモン大學の恒例企画「なべっこ遠足きりたんぽ鍋」での集合写真。茨城県日立市の「夢ひたちファーム中里」の築100年の古民家にて開催された


参加者の温度を意識した関係性づくり

交流イベントに顔を出す方なら、一度は経験しているのではないだろうか。「参加したは良いけど、誰とも話せなかった」「参加者が身内だけで固まっていて、身の置き所が無かった」といった経験。「参加者のレベルが高すぎてついて行けなかった」という方もいるかもしれない。

しかし、菅原さんを介して、彼が運営するイベントやコミュニティに参加したなら、おそらくそうなってしまう確率は低い。

というのも、「まぜるなキケン」について伺ったときに、菅原さんがいかにコミュニティづくりに心を砕いているかを感じられたからだ。

お話を伺った場所は、茨城県日立市にある「地域貢献型シェアハウス コクリエ」。菅原さんの「茨城移住計画」も、この場所を拠点としている


菅原さん「『まぜるなキケン』は、同種異業 高い志を持った同志と異なった業種の人たちの集まり。志がある、情熱があるというのが共通点で、それ以外はバラバラ。他のコミュニティと違うのは、志と情熱があるかどうかを基準にして人を集めている、ということですね。結果的にコミュニティの熱量が高まり、参加者にとって良い場所を作れています」

このコミュニティは招待制のイベントで、誰でも参加できるというわけではない。

菅原さん「運営側から直接招待された参加者、それに参加者から紹介された人を加えて場を作っています。招待制とはいっても、みんなで場を作り上げているというところを大切にしていますね。志ある人、情熱がある人の紹介は、同じ熱量の人が多い。そこから同志の輪が広がっていきます」

コミュニティの中で発生する熱量が最適になるよう、神経を使って人選。さらに、参加者を選ぶときに考えているのは、「参加者本人」のことだけではない。

同種異業のコミュニティまぜるなキケン in 勝田での集合写真。ここから仕事やプロジェクトが生まれ同志の輪が広がっている


菅原さん「作るのが得意な人や、下書きが得意な人など、人によって得意分野があると思うんです。僕は配色が得意ですね。イベントでは、さまざまな特徴を持った人たちがうまく混ざり合うことを意識します。外から来た人も楽しめるように、その場になじめるようにデザインしています。自分もヨソモンだから、余計にそう思うんですよね」

菅原さんが仕掛ける、参加者と場の熱量を考えたコミュニティづくり。なかでも、まぜるなキケンの翌日は、さすがの菅原さんも気疲れで疲れてグッタリしてしまうそうだ。

しかし、参加者たちのことを考えてくれる人がいるからこそ、コミュニティやイベントに参加した人たちが、継続した繋がりを作って帰ることができる。

都内からも茨城と関われるきっかけ

4つのコミュニティを軸に様々な活動を続ける菅原さん。最近では「茨城移住計画」の活動が目立つ。

茨城に興味がある人や都内企業に対して、茨城のキーマンをつなげる取組みや、都心で茨城のPRになるイベントをしているのだが、どうやら「移住計画」という名とは裏腹に、移住を押し売りすることはないというのだ。

茨城移住計画の企画するイベント、「stand」。茨城での働き方・暮らし方について、気軽に話し合える場所として、月2回のペースで都内で開催されている


菅原さん「茨城移住計画って名前ですけど、いきなり『移住してください』と勧誘しに行くのではなく、まずはは『茨城の楽しみ方を体感してください』っていう思いでイベントづくりをたくさんやってますね。そこで、地元の人と繋がるきっかけにもなると思います。それだけでも、茨城に来たとき、安心感があるじゃないですか」

現在、茨城移住計画が運営するイベント「Stand」が、月2回のペースで開催されている。茨城の働き方・暮らし方について、先ずは気軽に話してみたいという方におススメだ。もちろん、会場に集まった人同士の交流や繋がりも意識して企画だてられている。

茨城との交流のきっかけを探している方は、まずは菅原さんのコミュニティが企画するイベントに参加して、ぜひ、菅原さんに話しかけてみてほしい。