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第1回全国ヨーグルトサミットin小美玉

THINGS

小美玉市

第1回全国ヨーグルトサミットin小美玉

ヨーグルトを旗印に築かれた、市民同士の信頼関係

茨城県小美玉市。酪農が盛んなこの街で、全国のヨーグルトとヨーグルト好きが集うイベント、「第1回全国ヨーグルトサミットin小美玉」が行われたのをご存じだろうか。

会場となった公園「四季の里」には、小美玉市内はもちろん、茨城県内外から16自治体28メーカーがヨーグルトを出店。ステージ企画、講演、足湯、ミュージカル、マルシェなども開催され、2日間でおよそ39,000人の来場者でにぎわった。

ヨーグルトメーカーのブース。買い求める来場客の行列が、なかなか途切れなかった


この大規模なイベントを作る中心となったのは、小美玉市の街の人たち。所属や年代を越えて集まった小美玉市民が企画チームを結成し、力を合わせてヨーグルトサミットを実現させた。

大盛況のうちに幕を閉じたヨーグルトサミット。今回は、イベントづくりの舞台裏に注目したい。そこには、街全体を巻き込みイベントを作る過程の中で、市民主体のプロモーションを行うための基礎を築く、という役割があった。

ヨーグルトサミットとは?

会場の小美玉市は、茨城県のほぼ中央部、霞ヶ浦の北側に位置している。起伏の少ない平坦な地形と穏やかな気候に恵まれ、酪農が盛んな地域。生乳の生産量が県内第1位で、まさに酪農の街。2014年には、全国初となる「乳製品で乾杯」を推進する条例を制定するほどだ。

市内各地に点在する牧場


そんな中、このヨーグルトサミットは、2015年に作られた、小美玉市版まち・ひと・しごと創生総合戦略「ダイヤモンドシティ・プロジェクト」の中にある施策、「おみたまブランドの確立」の一つとして構想されていた。

そこから3年を経て、実施されることになったヨーグルトサミット。企画チームメンバーの準備や広報、地域住民や行政の協力、そして当日は天気に恵まれたこともあり、イベントの2日間では、目標の30,000人を大きく超える来客があった。東京、神奈川、千葉など、県外からの来場者も多かったという。

イベントのオープン直後から、すでに場内には来場客で溢れていた


想像以上の来客数に、オープンして2時間程度で完売してしまうヨーグルトメーカーもあったほど。場内のステージや企画が賑わったのはもちろん、会場周辺の飲食店への経済効果もあったそうだ。

街全体を巻き込んだ市民主体のチームづくり

さて、そんなヨーグルトサミットの裏側で作られていった、市民主体のプロモーションの基礎。イベントの舞台裏を、小美玉市役所 企画調整課の中本正樹(なかもと・まさき)さんに伺った。

イベントづくりにかけた思いを話してくださった中本さん。「朗らか」という言葉がよく似合う方


中本さんは小美玉市出身。高校、大学時代も地元で過ごしたそうだ。高校時代は野球部だったこともあり、父親たちが作る地元ソフトボールチームの助っ人に呼ばれることもあった。

中本さん「今考えると、親父たちは若者が活躍する場所を作ってくれてたんだな、と思います」

大学卒業後は小美玉市役所へ就職。文化行政を14年にわたり担当。「小美玉市四季文化館みの~れ」の立ち上げからずっと関り、「若い人が活躍する場も作ってあげたいし、その取り組みが評価されてほしい」という思いを胸に活動に取り組んでいた。

中本さん「みの~れの劇団で育ち、今回ヨーグルトサミットのイメージモデルもつとめた廣木葵さんが、地方創生シンポジウムのときに『今、私の体は東京にあるけど、魂は小美玉にあります』って言ってくれたんですね。思いを持って取り組む環境があると地元に対する愛着も深まっていくと思います。だから、今回のヨーグルトサミットもそういう取組みにしたい。そのためには、イベントを作る人が苦労しないといけないので、あえて負荷をかける仕組みにしたんです」

「魂は小美玉にある」と語った、みの~れの劇団出身の女優、廣木葵さん(上段・中央右側の女性)


中本さんは、「市民主体のプロモーションができるようにしたい」と語る。そこには、若手の活躍の場を作る、地元への愛着を深める、という思いがあると同時に、小美玉の将来を考えたときに「いつまでも行政が主導のプロモーションでは、担当が変わった後に継続できず上手くいかなくなる」という懸念もあった。

そこで中本さんは、ヨーグルトサミットの企画にあたって、「第1回全国ヨーグルトサミットin小美玉開催実行委員会」の中に、小美玉市民と行政職員からなる8つの企画チームを結成。チームごとに裁量を持たせ、自発的な活動を促していくことにした。

ミーティングを通してコミュニケーションも図っていった。メンバーの業種によっては、時間の調整に苦労することもあったという


チームメンバーを集める際は、「できるだけ街全体を巻き込む」という考えの下、様々な業種、組織に声をかけた。

結果的に、商工会青年部、青年会議所、酪農協青年部、農家、市民劇団、地元民間企業、クリエイター、飲食店、観光協会、小美玉市役所などから、様々なスキルやノウハウを持ったメンバーが集結。

8つのチームを組むときは、「ヨーグルトサミットが終わった後も継続して横のつながりを残していきたいと考え、チームに分けるときは組織に関係なく、あえてごちゃまぜにする」という思惑の下で人員が振り分けられた。

メンバーの熱量で固められたイベントの基礎

チームメンバーによる、ポスター写真撮影


各チームの働きぶりについては、中本さんが次々と語ってくれた。メンバーたちは、イベント企画に最低限必要な動きだけでなく、自主的に発案・実行していったそうだ。

例えば、フォトスポットや小冊子『in.小美玉』、ポスターに採用された写真は、メンバーが持つスキルから生まれたものだ。地元ヨーグルトメーカーの工場長は、人脈を使いヨーグルト関係者に積極的にアプローチ。市民劇団もミュージカルの脚本に反映するため、牧場などに足を運んだ。PR活動の際も、行政職員だけでなく民間から参加したメンバーが積極的に参加した。

イベント当日に必要なボランティアの人員も、チームごとに算出して、チーム内で責任を持って集めた。

学生から地元のお母さんまで、200名を超えるボランティアスタッフが運営に協力した


2018年2月から動き出したこのプロジェクトは、具体的な形として表に出せなかった時期もあり、「本当に集客できるのか?」と不安視されることもあったそうだ。

しかし、同年のお盆明けから9月にかけて、CMやパンフレット、告知の横断幕、バナー、のぼり旗などを矢継ぎ早に公開。他のイベント内で行ったPRのタイミングも重なり、ヨーグルトサミットへの期待感が一気に高まった。

中本さん「水面下でも、市民が主体的になってずっと準備をして、イベントの基礎を作ってきました。だからこそ、爆発的に情報が広まったときでも、広報活動の中で市民が自らの言葉でイベントを語れる体制になっていました」

本当の価値は、人と人との、繋がりの形成

ヨーグルトサミットを作る企画メンバーたち。最終的には49人まで集まった


迎えたイベント当日は、予想を大きく上回る来場客で会場が埋め尽くされ、大盛況のうちに幕を閉じた。街全体を巻き込む、という思いのもと、様々な市民が力を合わせ、成功させたヨーグルトサミット。

中本さん「チームを組んでから、みんな口々にチーム内のメンバーのことを『普通に生きてたら絶対出会わない人たちだろうな』と言っていました。でも、出会ったからには『出会わなければよかった』にはしたくなかったんです」

一緒にイベント準備をしていく中で、デザインの重要性に気づく人や、産業の6次化のヒントを得る人もいたそうだ。さらに、企画チームに参加した人たち同士が、ヨーグルトサミットとは関係ないところで、すでにデザイン発注や動画作成の相談などを行っているという。

中本さん「イベントを通して小美玉のヨーグルトが売れるようになる、というのはもちろん重要でしたが、最もこのイベントでつくりたかったのは、イベントに関わった人と人との繋がり。組織の垣根を越えて、信頼できる人が地域にいる、という状況を作りたかったんですよね」

中本さんも、イベント当日は現場スタッフとして参戦


市民同士の信頼関係を作りながら完成させた、ヨーグルトサミット。それを終えた今、次のステップとして、どんなことを考えているのだろうか。

中本さん「今後のシティプロモーションに繋げていきたい、というのは、ヨーグルトサミットが始まる前から考えていました。将来的には、シティプロモーションの担い手として、熱量を持ったセンスのある市民がプロモーションをやっていけるような組織が生まれ、それが仕事として成立するようになることを期待しています。これが、市民主体のシティプロモーションのありかたかな、と思っています」

みんなで作るイベントを経験したことで、市民も行政もレベルアップした小美玉市。次にここで生まれる「コト」が、どんな展開になるか、いまから楽しみだ。

PROFILE
茨城県小美玉市で開催された、全国のヨーグルトとヨーグルト好きが集うイベント。茨城県内外から16自治体28メーカーがヨーグルトを出店。ステージ企画、講演、足湯、ミュージカル、マルシェなども開催され、2日間でおよそ39,000人の来場者でにぎわった。イベント実現にあたっては、小美玉市の街の人たちが所属や年代を越えて企画チームを結成し、プロジェクトを進めていった。ヨーグルトサミットの第2回目は、小美玉市とは別の地域で開催が予定されている。

第1回全国ヨーグルトサミットin小美玉 https://www.city.omitama.lg.jp/omitama/