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高久香里さん

PEOPLE

茨城オトナ女子会 代表・可愛いが生まれるフラワーサロン-ALICE-アリス 主宰 ブランディング プロデューサー

高久香里さん

「ライフステージが変わっても、地方にいても、私らしく」高萩で想いを形に

地方にいながら、家庭も大事にしながら、自分の思い描く仕事や活動にチャレンジできるだろうか?そう思い、高萩市で「私らしく」チャレンジを続けている女性を訪ねた。3人の子供を育てながら、自宅でフラワーサロンを主宰し、企画プロデュースチーム「茨城オトナ女子会」の代表を務め、自身の経験を活かしてブランディングプロデューサーとしても活躍する高久香里(たかく・かおり)さんだ。話を伺うと、地域にとけ込み応援し合いながら活動する高久さんの姿から、想いを形にするヒントが見えてきた。

高萩の魅力や暮らしを発信

山あり海あり渓谷ありの自然豊かなまち・高萩市。海辺と山間部の距離は車で約10分という気軽さから、例えば、午前中に山歩き、街中のカフェでランチをし、午後は海辺でのんびりと、なんてこともかなうのだ。自然やアウトドアが好きな人、自然に囲まれてのびのび子育てをしたい人にはたまらない環境だろう。

取材当日、ご自分で着物を着付けてきてくれた高久さん。案内してくれたのは、2019年11月にコラボイベントを開催したという高萩市内の老舗味噌屋。ここでは、プライベートでも味噌づくり体験をしたそう。


高久香里さんも高萩の自然を楽しんでいるひとり。ピクニックをしたり、家族でカヌーに挑戦したり、桜や紅葉を愛でたりする様子を、SNSで発信。投稿をのぞいてみると「暮らしている人ならではの高萩」が見えてくる。ハッシュタグには「#高萩PR大使」の文字。公式の観光大使ではないそうだが、のちに市から観光委員に任命されたという。「私が勝手に言って勝手にやってるのに、ありがたいですよね」とはにかんだ。

オトナ女子に贈る「ちょっと特別な私時間」

高久さんの活動は市の観光委員だけでなく、フラワーデザイナー、自宅サロン「可愛いが生まれるフラワーサロン-ALICE-アリス」の経営、ブランディングプロデューサー、「茨城オトナ女子会」の代表など、多岐にわたる。

なかでも今、特に力を入れているのが「茨城オトナ女子会」。女性の意識改革と、茨城県、特に茨城県北地域の活性化を目指すチームで、「自分らしく輝く為のちょっと特別な私時間」をコンセプトにしたイベント企画プロデュースを行っている。

2019年8月に開催された「彩祭」の出店者・演者・スタッフの皆様。来場者は500人以上。築200年以上の茅葺古民家で「和文化」に触れるワークショップ(和菓子作り・浴衣着付け・アート書道など)や、クラフト&フードでおもてなし


例えば、美容のスペシャリストによるトークショーやメイク・ネイル・ヘアセットなどの体験ができる「Beauty festa」。高萩市にある茨城県指定文化財「穂積家住宅」に夏季限定でオープンするカフェ「高萩茶寮」とのコラボイベント「彩祭(いろどりさい)」。高萩市の老舗味噌屋とのコラボイベント「たつご味噌まつり」。

さらに、茨城の食を支える生産者や料理人から「食」の大切さや多様な生き方について学び、茨城の「美味しい・楽しい・面白い」を大人と子供が一緒になって体感する食育プロジェクト「IBARAKI HOLIC-いばらきほりっく-(以下、いばほり)」「キッズパティシエ」「ヴィーガンスイーツづくり」など、茨城で暮らす女性ならではの視点でイベントを展開。

イベント開催時には、時には会場内に保育士常駐の託児スペースを設け、小さいお子さんがいる方でも安心して参加できる配慮もしているそう。女性たちの笑顔や、人と人のつながり、地域の横のつながりが生まれている。

現在は新型コロナウイルスの影響でイベント開催が難しい中、屋外での実施や二部制にして人数を分散するなどの工夫をしながら活動を継続している。

1年2ヵ月ぶりの開催となった2021年4月の「キッズパティシエ」。地元の農家さんが育てたいちごでヴィーガンフルーツサンドと米粉パン作りを子どもたちに体験してもらった。コック帽は、子どもたちにプレゼント。

結婚しても、ママになっても、地方にいても、私らしく

もともとは会社員だったという高久さん。今に至った経緯はご自身の経験にあった。

「私が幼い頃から母は朝早くから遅くまで仕事をし、一緒にご飯を食べることがほとんどありませんでした。そんな子供時代があり、結婚当初から『子供を見ながら、時間に縛られずに、お家でできる仕事がしたい』という想いがありました」

そんな想いを抱き続けていたなか、結婚式のお祝いにいただいたプリザーブドフラワーに魅了され、会社に勤めながら資格を取得。2012年10月に自宅でフラワーサロンを開校し、会社終わりの夜間や休日にレッスンを行っていた。翌年、第一子出産を機に会社を退職し、教室業に専念。好きを仕事に、そして理想としていた働き方を実現させた。

どんなに活動が増えても、家族との時間はしっかり確保している高久さん。上の子2人は小学校・幼稚園、2歳のお子さんは義理のご実家にお願いし、午前中に集中して仕事や活動を。午後からは子供たちと過ごしている。


3年後、第二子を出産。2人の子育てと仕事の両立に奮闘する中、ある想いが生まれたという。

「我が子はかわいいけれど、2人の子供を育てながら自分の時間を確保する難しさを感じました。『自分を大切にする時間』は生きていく上でとても大切なことで、これは私だけでなく全ての女性にとっても同じだと思います。『ライフステージが変わっても、一人の女性としての自分を楽しみ、自分を大切にしてほしい』。そんな想いから2017年3月に茨城オトナ女子会を立ち上げました」

フラワーアレンジメント教室やイベント主催を通して、起業している女性や起業を目指す女性と関わる機会が増えたそう。「目標を持つ女性を応援したい!好きを仕事にし、ビジネスとして成功する為のお手伝いをしたい!」との想いが強くなり、「ビジネスとライフスタイルを豊かにするブランディング」事業もスタート。

自身の経験から生まれた想い。それを形にし続けている高久さん。踏み出す勇気はどこから湧いてくるのかと尋ねると、背中を押してくれる人、応援してくれる人がいるからだと話してくれた。

背中を押してくれる存在が勇気となる

今でこそいきいきと活動する高久さんだが、以前は人の顔色を伺ってばかりだったそう。それでも「私らしい生き方」へと踏み出せたのは、ご主人の存在が大きいという。

「主人は私が何かを始めるということに対していつも背中を押してくれるんです。やらないほうがいいと言われたことがなくて。主人のおかげで私は変われました。とても感謝しています」 

北茨城市で生まれ育った高久さんが高萩で暮らすことになったのも、ご主人の地元というご縁。

「私はこのまま高萩で暮らしを続け、骨を埋めると思います。だったら高萩のために何かできないかなと思ったんです。『地域のため』って結局『自分のため』になる。主人のためにも、家族のためにも、周りの人たちのためにもなると思って」

高萩は自然以外ないって外の人に言われるそうだが「暮らしていて不満はない。なかったら自分で作っちゃえばいいじゃん!」といつだって前向き。

自身の経験から生まれた想い。背中を押してくれる家族への想い。暮らしている地域への想い。これらが地域の人と心を通わせるキーとなる。

「高萩や県北の良いところや素晴らしいところを、私ももっと知りたいし、たくさんの人に魅力を知ってもらいたい。そして子どもたちにも知ってもらいたいです。将来茨城から出たとしても、地元に良いものがあった、こんなおもしろいことがあったという記憶が残っていたら、地元に戻るきっかけになるかもしれないですね」

自分の足で地域とつながる

今やすっかり高萩の地にとけ込み、地域の人とともにまちを盛り上げる高久さん。そのつながりは、自身の足で地道に築いてきたものだ。

「高萩で『知りたい!やりたい!』と思ったら、ツテがなくてもまず連絡をして話をして会いに行きます。でも、お相手からしたら最初は『いきなりなんだ!?』と思うじゃないですか。やっぱり、お互いの人となりが分かるまで牽制し合うこともあると思うんですよね。でも、地域を良くしたいという気持ちはみなさんも持ってらっしゃるので、何度か通って、少しずつ関係を築いています」

「私は一度断られても折れないタイプ」と笑う高久さんから、芯の強さが垣間見える。今はコロナ禍であることから、「お相手は会うことを良いと思っているのか、会う以外の方法でやりとりしたい方なのかをしっかり見極めるよう心掛けている」という気遣いがあるのも、高久さんが応援される理由のひとつだろう。

作物のことを教えてもらったり、イベントでコラボしたりと、よくお世話になっているという、エディブルフラワー(食べられる花)を栽培する地元の農家さんは、「農業の新しい取り組みをみんなに知ってもらいたいけど、どうしたらいいか分からないから、高久さんが一緒に盛り上げてくれるのはすごくありがたい」と言ってくれているそう。

2020年10月に開催された「いばほり@高萩」。この日は地元の農家さんにお邪魔して、食べられるお花・エディブルフラワーの種まきを。

つながりが県北地域へと広がったのも、自らアクションを起こした結果。例えば、2021年3月に男女共同参画事業セミナーの講師として登壇した大子町とのご縁は、洪水被害への募金がきっかけ。2019年秋に発生した大型台風で、甚大な洪水被害を受けた大子町。「同じ県北、直接のご縁はないけれど何かできることはないか」と考え、高久さんは自身のイベント内で募った募金をお届けしたそう。交流が続く今でも、「大子町のみなさんはいつ行っても温かく迎えてくださって、本当に嬉しいですね」と高久さんは語る。

「地域の方に応援してもらえるのはすごくありがたいこと。高萩や県北で背中を押してくれる存在は貴重。最近高萩では、家業を継ぐためUターンした若者が増えています。今度は私がそういった方の力になりたいです」

大子町で開催されたセミナーの様子。「茨城を楽しむ私の生き方」をテーマに、地域と自分自身を楽しむオトナ女子のリアルを伝えた。(手前の女性が高久さん)

ひとりひとりが輝くまちへ

実際に、高久さんとのチャレンジが成功体験となり、新たな一歩を踏み出した人もいる。

「イベントに出店してくださった方が自分でイベントを主催し始めたり、コラボした方が自分で講座を開いたり、そんな話を聞くと嬉しくなりますね」

茨城オトナ女子会のチームメンバーお揃いで作った、刺繍入りつなぎ。「形から入るタイプ」と称しながらも、「コロナ禍でも子供たちが体験体感する学びの機会を失わないように。大人も楽しむ機会を失わないように」と語る高久さんの、意気込みの表れかもしれない。

高久さんとともにチャレンジを続ける茨城オトナ女子会のメンバー5人も、いきいきと活動しているそう。メンバーとは、もともと学生時代からの友人やママ友という関係。立ち上げ当初は高久さん一人で運営していたのだが次第に手いっぱいになり、声をかけたことでチームが生まれた。

「それぞれ仕事や家庭があるので負担にならないよう、今の状況を把握し、できることをお願いしています。この子ができること、あの子ができること、というふうに進めていくことで、自分が思っているよりも良くなれるし、チームとしての成長にもつながる。『みんなでできたほうがいいよね』って。私は思ったら一直線になってしまうので、そういう見方もあるのね!と違う意見をもらえることもありがたいです」

例えば、以前デザイナーの仕事をしていたメンバーには、印刷物のデザインなどをお願いしているそう。

「スキルをそのままにしておくのはもったいないと思って。作って欲しいものの大枠だけ伝えると120%のクオリティで返してくれる、頼もしい存在です」

関わる人たちも「私らしく」いられるように。そんな高久さんの在り方は、地域の様々な人たちが活躍する地域づくりにもつながってゆくだろう。

プロデュースからプロダクトへ

この春、食育アドバイザーの資格を取得した高久さん。これから新たなチャレンジを始める。ママの時間を大事にしてほしいという活動理念を多くの人に知ってもらえるよう、活動を続けていくのはもちろん、いばほりで子供たちと作った食べ物を商品化したい、という構想を実現するべく動いているところだ。

いばほりで土づくりや種まきを楽しむ子供たち。後日、参加したお母さんから「帰り道に息子が『今日は最高の1日だった~』とつぶやいていました」という嬉しい連絡もいただいたそう。

「食事は毎日摂るものだし、食べ物で身体も心も変わる。食べ物がどういう風に作られて、口に入って、心身を作っていくという一環を、子どもたちやお母さんたちに伝えていきたいなと思っています。と言ってもまだまだ足踏み状態ですが、素人の強みを活かして、どんどん進んでいきたいです」

日常生活や学校では得られない「知る・触れる・食べる」体験を通して、「食」と「地域」に向き合う親子や家族の時間を紡いでゆく。「IBARAKI HOLIC」の名にも込められた、茨城の「美味しい」を高久さんと体感してみてはいかがだろうか。

自分らしく輝く高久さんの姿は、「地方にいながら、家庭も大事にしながら、自分の思い描く仕事や活動ができるだろうか?」と模索する人たちの勇気となるはずだ。

形にするまであきらめない

最後に、「想いを形にするために大切なこと」について伺った。

 「行動することですね。考えているだけだったら何も始まらない。行動=外に出るだけではなく、誰かと会って話をすることも行動だし、本を読んで勉強することも行動。やりたいことがあるならとにかく行動。形にするまであきらめなければ、いつの間にか形になっていると思います」

PROFILE

PEOPLE

茨城県北茨城市出身。高萩市在住。1986年生まれ。
プリザーブドフラワーの魅力と作ることの楽しさにハマり、会社に勤めながらフラワーエデュケーションジャパンの資格を取得。2012年10月、自宅サロン「可愛いが生まれるフラワーサロン-ALICE-アリス」を開校。翌年、第一子出産のため会社を退職し、教室業に専念。
第二子出産後、2人の子育てと仕事の両立に悩み「ライフスタイルが変わっても、一人の女性としての自分を楽しみ、自分を大切にしてほしい」との想いから2017年3月に「茨城オトナ女子会」を発足。代表として「自分らしく輝く為のちょっと特別な私時間」をコンセプトにしたイベントを企画運営。
自身の経験を活かして、好きを仕事にし、ビジネスとして成功する為のお手伝いをする「ブランディング プロデューサー」としても活動中。

茨城オトナ女子会 http://otonajoshikai.com/
高久さんブログ https://ameblo.jp/alice-pfs/

INTERVIEWER

柴田美咲

ライター/フィットネスインストラクター 1990年生まれ。茨城県日立市出身。海と沖縄と島旅が好き。東京の体育大を卒業後、地元のスポーツジムに就職。2015年よりフリーランスへ転身し、フィットネス関連の講座やイベントの講師、ライターとして活動。2020年に第一子を出産し、家庭と仕事の両立を模索中。人の想いやふるさとの物語を未来につなぐ「ひたちのまちあるき」「まちキレイ隊ビーチクリーン」主宰。

Photo:横倉秀人(高萩市出身)(一部提供写真を除く)