茨城のヒト・コト・バ PEOPLE, THINGS, SPOTS OF IBARAKI

小泉正人さん

SPOTS

SUNNY SUNDAY

小泉正人さん

地域とクリエイターをつなぐ、街の雑貨屋さん。|常陸太田・鯨ヶ丘商店街「SUNNY SUNDAY」

昭和レトロが建物が数多く残る、常陸太田・鯨が丘。
この街を歩いていると、古い街並によく馴染む白く素敵な建物が見えてきます。

今回ご紹介するのは鯨が丘の『SUNNY SUNDAY』。SUNNY SUNDAYと言えば、おしゃれで種類豊富なマスキングテープや海外から買い付けてきた雑貨店として、地元ではとても有名なお店なのです。

棚にずらっと並ぶマスキングテープ。まるでマスキングテープのために作られたような棚ですが下駄箱に使われていたものだとか。

紙もの好きにはたまらないアイテムも

SUNNY SUNDAYでは、種類豊富なマスキングテープの他にも、ヨーロッパや各国内外、小泉さんが買い付けてきた品々が並んでいます。店内に並べられたたくさんの雑貨を見て回るのは、宝探しのようでワクワクします。

常陸太田に住んでいる私にとって、わざわざ遠くまで足を運ばなくても、身近にすてきな雑貨が買えるお店があるのは嬉しいものです。買うつもりはなくても、道すがらかわいいもの見たさにお店を覗いてしまい、気に入ったものを見つけて買ってしまうこともしばしば。

店内のあちこちに並ぶかわいい雑貨たち。紙もの好きな人にはたまらないものも。

文具や紙が大好きなんです。紙の匂いやインクの匂いとか。姉と妹の間で育った影響でかわいいものが好きになり、古い紙や包み紙、かわいいものきれいなものの虜になってしまったんです。

そう話す小泉さんがセレクトした紙ものは小泉さんがこれまで集めていたものや海外のバイヤーさんから仕入れたもの、例えば、海外のお店で使われていた紙のコースターやマッチのラベル、使用済みの切手など。紙もの好きなひとにはたまらないアイテムがたくさん置いてあります。

洗練されたアイデアとアンテナを併せもつマルチな店主

小泉さんの生まれ育ったのはこの鯨が丘商店街。ちょうど向かいのヨコセスポーツ店の隣で、今は美容室になっています。ご自身の少年時代には、まだ商店街が賑わっていたとのこと。

昔は肩がぶつかるくらい人で賑わっていました。商店街のひとたちはみなサービス精神が旺盛でひとの繋がりを大事にし、お互いを思いやる姿がありました。街のわくわくする感じや活気がありましたね。

話を聞いていると、子供たちも大人たちも楽しむ様子が目に浮かんできます。『商店街に賑わいを取り戻したい』という気持ちは昔の商店街を知っているからこそ。商店街を元気にすることが街全体を元気にすることに繋がるのでは、そう思いました。

小泉さんはお店の経営にとどまらず、地元のプロジェクトや子育てについての集まりに参加したり、自らイベントを企画して開催したり積極的に活動しています。それはつながりを大事にするため、商店街を元気にするため。その活動は一人の人間がやっているのかと思うほど多岐にわたります。

『里山サニサンまつり』もそのひとつ。食べ物やクラフトのお店など60店以上が並びました。県内在住『color+life』さんの透き通る素敵なアクセサリーが並んでいたり、茨城を中心に活動しているキャンドル作家の『Can no Candle』のキャンドルや消しゴムはんこ作家モリタアキコさんの消しゴムはんこなども。人気の『旅する花屋ハヤシラボ』さんは福島から。常陸太田の鯨が丘の120年続く老舗のお菓子やさん『山林堂本店』のお店や高萩市で人気の『ら麺はちに』の移動販売車も並びました。フリーライブでは茨城で活動するりりぃさんが常陸太田の自宅で音楽教室をするayanecoさんと『あやねこ楽団とりりぃと愉快な仲間達』として出演していました。

また、水戸のクラフト市に参加したときは、『マスキングテープで切手釣り』など、小泉さんならではのアイデアでお客さんを楽しませてきました。

ワークショップではマスキングテープを使ってフレーム作りやノートをコラージュしたり。その仕上がりのかわいさは男性がやっているとは思えないほどです。

無印良品で行われたワークショップ。『子育てで忙しいお母さんたちが少しでもこの時間で息抜きができたり、気軽に楽しんでもらえたらいいなという思いでやっています。』

クリエイターと地域をつなぐことでひとが集まり、街が活性化されていく

イベントの仕掛け人である小泉さんの周りにはたくさんのクリエイターたちがいます。お店を見て回るとそのクリエイターさんとの関係性が見えてくるようなものが。

ひとつひとつお店のためにデザインされたマスキングテープもそのひとつ。パン屋さん、家具やさん、ケーキ屋さん、地元のプロジェクト、常陸太田市のマスコットキャラクターじょうづるさんのマスキングテープも。オリジナルで小泉さんがデザインしたもので各お店で使われているものです。そのマスキングテープはお店のアイコンにも、広告としての役割も。

ここの棚はいろんなお店のマスキングテープが。小泉さんがデザインをしています。

常陸太田市の自酒プロジェクト『ご縁だね』のマスキングテープ。デザインがかわいいので、知らずに使っている海外のひとも。

また、店内には地元の作家さんが制作した作品が陳列されていています。仕切られている棚のボックスには、器やキャンドルやアクセサリーなどが並べられています。全て小泉さんがこれまでに出会った作家さんで、お客さんに紹介したり、作家さん同士をつなげたり、これまでのつながりを大事にそれらを活かす形でそれぞれのクリエイターさんを応援しています。

この商店街からいいサイクルができればいい。子育てならあそこのカフェにいくといいよ、とかあそこのお惣菜がおいしいよ、とか立ち飲み屋さんがあったり、お店が増えたらそういった楽しみ方が増える。この商店街から発信していくことで活躍する作家さんがうまれて、それを身近に見れる若者がいて、利用するお客さんがいて。面白い街になれば年を重ねた若者がいつか故郷を思い出して、戻ってきてくれる、恩返しをしに来てくれる、というようないいサイクルができればいい。生まれた川に戻る鮭のように。

クリエイターと地域をつなぐことでひとが集まり、街が活性化されていく。小泉さんの活動はまさに「つなぎ役」。

地域のひとたちから背中を押されるかたちで前に出ることが多くなってきたとのこと。アドバイスを求められたり、サポートを自ら買ってでることも。

地域の輪に入るというのはとても勇気がいるかもしれないけれど、その一歩でつながりが増え、一緒に活動もできる。想いがあって活動したいひとがいたら飛び込んできてくれれば助言したり、手伝うこともできる。

これまで培ってきた信頼関係があってこその言葉だと思います。

SUNNY  SUNDAY10周年!イベントが開催されました

SUNNY SUNDAYは今年で10周年を迎えそのイベントが開催されました。初日はあいにくの天気でしたがたくさんのお客さんで賑わっていました。

常連のお客さんやおばあちゃん、お母さん、子供と3世代で来るお客さんも。『赤ちゃんだった子が次に来店したときには大きくなっていたり、人の成長も見れるのは嬉しいことです。』と小泉さん。

ここで何もない状態から始めて、お客様、家族、地域に助けられながら10年やってこれました。この先の10年、20年なにが起こるかワクワクしながら発信していきたいです。

そう語る小泉さんは、どのようにお店を続け、クリエイターさんとつながりを育んできたのでしょうか。

今年で10周年を迎えた「SUNNY SUNDAY」。何もないところからはじめたお店が、地元だけでなく市外そして県外からのお客さんに支持されるまでに成長したのには理由がありました。

それは、「“ここにしかないもの”を提供する」ということ。

こだわって選んだ商品もさることながら、このお店には、“ここにしかないもの”が溢れています。

寂しい商店街の光景がずっと頭から離れなかった

SUNNY SUNDAY 店主 小泉正人さん

仕事と働き方に違和感を覚えながら日々を過ごしていた会社員時代、あるとき地元に帰省した際、小泉さんはふと商店街の様子が客観的に見えたそうです。

「すごく寂しい街だな、こんな感じだったかな」

いま店を構えている鯨ヶ丘に戻ってきたときに見た光景がずっと頭から離れなかったという小泉さん。

賑わっていた昔を知っているからこそ、商店街の寂しさに呆然としたとのこと。いま自分が「できること」と「やりたいこと」をこの商店街で表現しよう。そう思って始めたのが「SUNNY SUNDAY」でした。

今では遠方から来るお客さんや海外のファンも多いSUNNY SUNDAYですが、はじめた10年前は土日でも来客数は5人ほど。そもそも目の前の通りにも車は走っていないし、歩いているひとも珍しい、閑散とした状態だったといいます。

ここにしかない品揃え

店内に並ぶ種類豊富なマスキングテープ。

閑散とした街、そしてお店。なぜお客さんは来てくれないのだろう、と考えた時期もあったそうです。小泉さんには、そういう状況でも絶対に譲れない、大事なものがありました。
それは、「ここにしかないもの」を売るということです。

「SUNNYSUNDAY」には「ここにしかないもの」が溢れています。種類豊富なマスキングテープはお店でつくるオリジナル。そして、地元で活動する作家さんによる作品。それらは文字通りここにしかないものです。また地元では絶対に手に入らないような海外の文具や小物、紙もの好きにはたまらないアイテムなど魅力的な品々が並んでいます。

丁寧に選んだ「ここにしかない」商品を並べ、お店の扉を開けて忍耐強く待っていた小泉さん。そのうち、少しずつでも足を運んでくれていたお客さんによる口コミがきっかけで、しだいに賑わってくるようになりました。

「ひとの人生の中にちょっとだけ入り込むことで、お互いの人生がちょっとずつ変わる」

SUNNY SUNDAYでは、年に数回、店外スペースと隣接するギャラリーを利用して、マルシェを開催しています。

7月の10周年イベント初日はあいにくの天気でしたがたくさんのお客さんが訪れていました。

店舗に隣接するオープンギャラリー倉。

雨がちらつくあいにくの天気にかかわらず、このイベントを楽しみに待っていたお客さんで賑わっていました。

出店していたのは、キッチン用品や家具や食品などのミニチュアを制作しているRoom8 Miniatureさん、天然石でアクセサリーを制作するclocca さん、ファッションからインテリアまでオリジナルのテキスタイルを制作するfrumafar.さん、風合いのある消しゴムハンコを制作する江連判子. さん。みなさんが生き生きとお客さんと接する様子を見ていると、SUNNY SUNDAYがお客さんだけでなく、作家さんにも愛されているのがわかります。売り買いするだけでなく、人と人とが出会い、会話する場そのものを楽しんでいる。

ここには、魅力的な品揃えだけではない、もうひとつの「ここにしかないもの」がありました。

小泉さんのお話のなかで印象的だったのは、お店にやってくるお客さんのなかには商品を買う買わない関係なく、ただ話をしにくるひと、また、わざわざ試験が終わったことの報告にくる学生さんがいるということです。震災後の不安定な状況でもSUNNY SUNDAYに行けば小泉さんに会える、そう思ってお店を訪れるひとも多かったとのこと。

ここにしかないもの。それは「出会い」でした。それこそ、SUNNY SUNDAYが一番たいせつにしてきたことなのです。

それはお客さんにとってだけでなく、店主である小泉さんにとっても同じことのようです。お店を始めてから、会社員の時には考えられなかった出会いがあると小泉さんは言います。

お金はないけど夢がある、という若者の話が魅力的に感じます。ひとの人生のキラキラとした一片や、人の成長が垣間見える。お客さんと直に接する今の仕事だからこそ味わえる醍醐味です。
以前、お店にきていたお客さんの引っ越しの手伝いをしたことがあります。作家さんが発信するSNSの手伝いをすることもある。そうやって関わったことでまた新しい関わり方ができるんです。ひとの人生の中にちょっとだけ入り込むことで、お互いの人生がちょっとずつ変わる、そんな関係がいいなと思います。

お金だけではないやりとりがここSUNNY SUNDAYにはあります。小泉さんはこう言っていました。

本当にいいお客さん、いいひとたちに囲まれているんですよ。

地域のなかで商売をするひとの、心の底から湧き出ている言葉だと思います。小泉さんが実践する商いは、商品とお金をただ交換しているだけじゃない。私たちは地域の活性化について考えるとき、お金がまわる経済のことを考えがちです。あるいは、何か新しいことを始めようとするとき、やはりお金が重要だと思ってしまう。それらはもちろん、大事なことではあるのですが。

でも、小泉さんのお話を伺って思ったのは、お金は手段でも目的でもなくて、「関わり」の結果なのかもしれないということ。地域で生きていく者として、大きなヒントをもらった気がしました。

常陸太田を訪れることがあれば、ぜひ立ち寄ってほしいお店です。

「12月倉 2017」開催のお知らせ

常陸太田市鯨ヶ丘商店街オープンギャラリー倉から始まったイベント「12月倉」が今年も開催されます。鯨ヶ丘商店街を舞台に素敵な出店者が集まります。

詳細はFacebookイベントページを御覧ください。

PROFILE

SPOTS

SUNNY SUNDAY

住所 / 茨城県常陸太田市東一町2295-2
Tel / 0294-72-3025
HP / http://www.sunny-sunday.net
営業時間 / 10:00~19:00(日によって変わりますので各SNSでご確認ください)
定休日 / 木曜日(週2日休む場合あり)

INTERVIEWER

山野井咲里

フォトグラファー 都内スタジオ勤務後フリーに。 子供が小学生になるタイミングで不規則な写真の仕事から離れる。 2014年茨城にUターン。写真の仕事を再開する。

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