茨城のヒト・コト・バ PEOPLE, THINGS, SPOTS OF IBARAKI

うのしまヴィラ

SPOTS

日立市太田尻海岸のカフェ感覚で泊まれる宿

うのしまヴィラ

ガラケー(人柄系)館主が支える、ヒトの繋がりと化学反応の連鎖

日立市の太田尻海岸に建てられた宿泊施設、「うのしまヴィラ」。

全室から太平洋を一望できる宿泊施設、目線の高さで海を眺めながらお茶や食事を楽しめる「CAFE & DINING海音(シーネ)」、宿泊棟と多目的コミュニティスペース「ユズリハhouse」を中心とした、海辺のセカンドハウスだ。

建物から徒歩0分にある、プライベートビーチを思わせる静かな砂浜では、水平線から昇る日の出や、打ち寄せる波の音、夜空に浮かぶ月をのんびりと楽しめる。CAFE & DINING海音で頂ける料理は、地元の野菜、畜産・水産物を取り入れた季節の味覚。目と舌で堪能するだけでなく、館主の原田実能(はらだ・みのう)さんが、冗談を交えながらもさりげなく語ってくださる作物の特徴やストーリーも一緒に味わうことができる。

うのしまヴィラの目の前にある海岸。早起きすれば、静かな海岸で清々しい朝の光を体いっぱいに浴びることができる


ロケーション、茨城の味覚、原田さんの人柄が組み合わさり、心穏やかにゆっくり過ごすことができる、うのしまヴィラ。実は、宿泊や食事を楽しむ場所であるだけでなく、ヒトとヒト、ヒトとコトが出会い、化学反応を起こしていく場所という側面もある。

うのしまヴィラは、どんな思いをもって作られたのか。そして、どんな化学反応が起こってきたのか。うのしまヴィラ館主の原田さんに、この場所についてお話を伺った。

東日本大震災からの再建

館主の原田さん。朗らかなお人柄で、うのしまヴィラへのお客様にさりげないおもてなしを届けてくれる。


原田さんは広島県出身。日本野菜ソムリエ協会公認の「野菜ソムリエ」、茨城県が公認する「いばらき観光マイスターS級」、日本バーベキュー協会公認の「上級BBQインストラクター」の資格と、軽快なオヤジギャグの四本柱を駆使したおもてなしが持ち味。

「私はガラケー(人柄系)なんですよ。人柄だけで生きている。細かい戦略戦術ではなく、人柄と核となる想いだけでやったら、それにけっこう共感してくれる人が現れて、そこに具体的な話やアイディアを持ってきてくれるのがいつもの私のパターンですね」

写真左から、CAFE & DINING海音、宿泊棟、ユズリハhouse。すべての建物から海を眺められる。

 

うのしまヴィラの前身は、実は「鵜の島温泉旅館」というビジネスを主軸とした旅館。奥様の実家が鵜の島温泉旅館を経営していたが、先代の女将、つまり奥様のお母様が倒れたことがきっかけで、原田さんが鵜の島温泉旅館を継ぐことになった。(1991年11月)

そして転機になったのが、2011年3月11日に発生した東日本大震災。目の前が海の鵜の島温泉旅館も甚大な津波被害を受けた。しかし、東日本大震災から3年間、原田さんは旅館の再開を目指して、被災した建屋の後片付けをしながらも、イベントへの参加、人脈作り、情報収集などを行っていった。

CAFE & DINING海音に入ると、まず飛び込んでくる海の景色。直線を描くように並んだ椅子は、原田さんの丁寧なセッティングによるもの。


再建を目指しながら情報収集する中では「食事を提供するだけでなく、食にまつわる情報をお客様に提供することの重要性」に気づき、被災経験の中では「人の繋がりや声をかけてもらえる間柄が命を活かしてきた」という実感も抱いていた。

また、鵜の島温泉旅館時代を振り返ってみると、「県外から仕事でやってくるお客様は多かったが、一方で地域との繋がりが無かった」という記憶もあり、旅館を再開したならば、地域の人たちに気軽に立ち寄ってもらえて、訪れた人たちが繋がりを深められる場所にしたい、という想いもあった。

どの席に座っても、目線の高さで海を眺められる。


日常を深める、海辺のセカンドハウス

そんな背景をもって2014年に再開したのが、うのしまヴィラ。ここには、「海辺のセカンドハウス」というキャッチフレーズがつけられており、そこには理由がある。

「大切にしている想いの中に『繋がり』というのがあって、そこから派生したうちのキャッチフレーズが『海辺のセカンドハウス』。一番大切にしている家があって、ここは二番目の家。別荘ではなく、あえてセカンドハウスとしたのは身近なものとして感じてもらいたいからなんです。自分で言うのもなんですが、私のフレンドリーな人柄だけでなく、海もフレンドリーだと思うんです。この建物からすぐのところで波に手を触れられますし、目の高さで海を見ることもできる。ここをフレンドリーな場所にしたいという思いがあるので、セカンドハウスという言葉を大切にしています」

CAFE & DINING海音の料理は、地域の素材・季節の味覚を活かしたものばかり。調理は原田さんの奥様が担当。


「人の繋がり」を大切にし、それを生み出す場として身近にある「セカンドハウス」がある。そして、この場所では、「深日常」を過ごしていってもらいたいと原田さんは語る。

「非日常を提供する中で、深日常、つまり日常を深める場所にしたいんです。会話の機会が減ってしまった家族であったとしても、うのしまヴィラに来てのんびりしながら、食事をしたり、話したかったことを話したり、一緒に笑ったりする。この場所で日常を深めて、それを元の日々の中に持って帰ってもらう。日常を深めあい、確かめ合う場所にする。そういうことを大切にしていきたいです」

コースターにメッセージを書き残していってくれるお客様も多いそうだ


お客様には、もちろんうのしまヴィラを楽しんで行ってもらいたいが、おもてなしに心を配りすぎても、お客様が過ごす時間が非日常になりすぎてしまう。そうならないためにも、原田さんはギャグを挟むのだそうだ。「ギャグは言いたくないんだけど、口から出ちゃうんですよね。宿命ですから」と冗談めかして語る様子からも、原田さんのフレンドリーな人柄が伺える。

うのしまヴィラで「深日常をいかに体験してもらうか」にフォーカスし、場を作り、食事を出し、お話をする。そしてそれは、お客様に「こんな人を連れてきたい」「こんなことができるかもしれない」というインスピレーションを浮かべてもらうきっかけにもなる。

夕暮れ時になると、はるか水平線に船舶の灯りも見える


「100人いれば100通りの使い方があります。『物が壊れたりしなければ、ここで何をやってもOK。私たちは、あなたの二つ目の家の管理人ですよ』ぐらいの感覚でいます。お客様からちょっと難しい相談を受けたときも、出来ないと言うのではなく、こんな風にやればできるかな、という落としどころをご提案するようにしていますね」

利用者が見出す、うのしまヴィラのポテンシャル

これまで、原田さんの想いに共感してくれた人たちが、宿泊や食事以外の様々な形で、この「海辺のセカンドハウス」を利用してきた。

ユズリハhouseの1階スペース。扉をいっぱいに開け放つことで、海と繋がる


たとえば、海の前でのビーチヨガの企画。海間近に感じられるロケーションに魅力を感じ、ヨガインストラクターたちが企画開催している。雨が降ったとしても、室内の大きな窓から海を望むことができる「ユズリハhouse」を利用して、海を感じるヨガを体験することができる。良いロケーションで宿泊や食事も楽しめるといこともあり、合宿場所としての利用も多い。

「一番びっくりしたのは、ユズリハhouseを結婚式の場所として使いたい、というご依頼。この場所とこの風景が、結婚式に展開するとは思ってもみなかったんです。 皆様がいろいろな方法でこの場所を使ってくださるので、自分の中にも、場所の取り扱い説明書が蓄積しているんですよ」

ユズリハhouseの2階スペース。一面に畳が敷かれており、宿泊もできる。


飲食や宿泊を利用するお客様の中でも、「今日はプチ家出なのよね」と言いながら、家事や子育てから解放されたいつもとは違う時間を過ごすお母さんグループもいるという。2016年に行われた県北芸術祭のときは、うのしまヴィラが作品の展示会場としても使用された。

うのしまヴィラがオープン二周年の感謝祭イベントを行う際は、埼玉県からやってきたインターン生がイベントの企画運営を行った。日立に縁もゆかりもないインターン生に対し、原田さんはサポート役として関わり、日立や近隣地域で場づくりや農業、音楽活動などを行う人々とインターン生を繋いでいった。原田さんは直接動かなくとも、イベントは大盛況に終わり、原田さん一人ではできなかった「うのしまヴィラを支えてくれた人たち、繋がってくれた人たちへの感謝祭」を実現させた。ここで生まれた人と人との繋がりは、イベント後も続いているそうだ。

3周年記念イベントの様子。写真の場所は施設内に併設されている「うのしまプール」


この感謝祭イベントを行った際は、出展者の中から「ここで定期的にライブできまんせんか」という声も上がった。原田さんは快諾し、毎月第二日曜日に開催する「セカンドサンデーライブ」が実現。「イベントをするのに課題や問題ははあると思うけど、やりながら解決していこう」という原田さんの支えにより、2019年1月現在、30回以上開催されている。様々なパフォーマーが出演し、出演者や来場客との間での交流も生まれている。

うのしまヴィラのオープン2周年記念イベントの中から生まれた「セカンドサンデーライブ」の、ステージの様子。


人が繋がり、化学反応が生まれる場所

宿泊、飲食での営業だけでなく、企画や合宿、インターン生の受け入れ、イベント開催など、宿泊施設以上の様々な役割を果たし、人と人を繋いできたうのしまヴィラ。2014年の旅館再開にあたり、原田さんはこういった使い方で人が集まるよう戦略を立てていたのかと思いきや、実はそうではないという。

CAFE & DINING海音の一角には、地域情報パンフレットや、作家作品の展示販売スペースがある。


「自分の性格もあって、明確に戦略を考えてやってきたというより、直感で大切だと思ったことに従って取り組んできました。振り返ってみると、その取り組みも結果的に一貫性があるものだったな、という感じですね」

ユズリハhouseを作る際にも、「安く使えて飲食が自由にできて、人との繋がりを深める場所があったらいいな」という構想から出発し、この場所をどう使えばいいのか、ということは考えていなかったそうだ。

うのしまヴィラのオープン当初は原田さんも想定していなかった出来事が発生し、そのたびに、新しい人と人とのつながりが生まれていった。うのしまヴィラにやってきて、それぞれが持つアイディアでこの場所に関わっていく人たちを、原田さんはしっかりと受け止めてきた。

「街づくりというのは、人と人がつながって化学反応を起こし、それが連続すること。人が出会い新しいものが起こり、いろいろなものが連続して波及効果を起こしていく。うのしまヴィラでは普段は出会わないだろう人たちが出会ったり、どんどん新しい人たちが協力し合っている。ここが、化学反応の連鎖の、出発点の一つになればいいなと思います」

夜は月の出る海を楽しめる。時期によっては、月が海に描く光の道を見ることができる。


これからのうのしまヴィラ

太平洋を眺めるのは、マスコットキャラクターの「鵜~ちゃん」


東日本大震災を経て、 鵜の島温泉旅館が2014年にうのしまヴィラとして再スタートしてから約5年が経った。これからの展開を原田さんに伺ってみると「5年後ぐらいに修行中の息子が帰ってくるので、そうすると自分がお客様に提供できる仕掛けも増やせると思っている」とのことだ。

原田さんの長男は、福岡のフレンチレストランで厨房・ホールの修行後、現在は東京でフランス菓子のパティシエとして修行をしつつ、経営者としての経験も積んでいくことになっている。

長男が帰ってくることを心待ちにしながら、原田さんは次の展開を煮詰めているところだそうだ。

「海の前でこんなに楽しく過ごせるんだよ、という文化を、言葉にして、ストーリーにして伝えるものが少ないように思います。なので、海での過ごし方や遊び方、楽しみ方を情報発信できる場にしていけたらな、ということを、息子が戻ってくるまでに考えているところですね」

人々の繋がりと化学反応の連鎖は、これからもうのしまヴィラから生まれてゆく。ガラケーの原田さん、そして5年後に帰ってくる予定の息子さんは、どんな人の繋がりをつくっていくのだろうか。この場所で、深日常を体験しながらも、化学反応の連鎖の中に混ざってみてはいかがだろうか。

PROFILE
宿泊施設、CAFE & DINING海音(シーネ)、ユズリハhouseからなる、海辺のセカンドハウス。前身であるビジネス旅館「鵜の島温泉旅館」が東日本大震災の被害に見舞われたが、2014年にうのしまヴィラとして再開。日常を深める場所として飲食や宿泊で利用されるだけでなく、利用者の発想とそれを受け止める館主の原田さんの懐の深さにより、様々な企画が実現。人と人の繋がりを生み、化学反応の連鎖を起こす始まりの場所にもなっている。

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