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茨城のヒト・コト・バ PEOPLE, THINGS, SPOTS OF IBARAKI
茨城未来デザインプロジェクト
if design project
茨城県が新たにはじめた、クリエイティブ人材の流れをつくるプロジェクト
関係人口という言葉をご存じだろうか?
移住した「定住人口」や観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人を「関係人口」という。それに着目し、総務省でも「関係人口創出事業」が実施されるなど、近年注目されている人口の概念だ。
地方においては、人口減少・高齢化により、地域の担い手不足という課題に直面している。そのなかで、この「関係人口」と呼ばれる地域外の人材の流入を図ることで、地域づくりの担い手となることが期待されている。近年、首都圏で働く人々のニーズにおいても、「休日や仕事外で自らプロジェクトをつくりたい」「地元に貢献したい」「地方で自らのスキルの腕試しをしたい」「二拠点で生活の基盤をつくりたい」等のニーズが増えてきたことも「関係人口」という概念が注目されてきた要因だ。
そんな中、茨城県で「if design project~茨城未来デザインプロジェクト~」が始まった。茨城県は、東京圏に最も近い地方の1つ。そこで、東京からのアクセス性の良さを活かし、東京圏で潜在的に茨城や地方に対する想いを持つ個人・フリーランス等のクリエイティブな人材を県内に呼び込み、チャレンジできる環境を創ろうという新たな取り組みである。
パートナー企業と連携した本気の課題解決提案プログラム
if design projectは、「あなたの”もし…(if)“が、茨城(ibraki)の未来(future)を変える。フィールドワーク+講義+ワークショップによる実践型デザインプロジェクト」ということをコンセプトに掲げている。
このプログラムには、異なるバックグランドを持つ社会人や学生たちが参加。茨城の未来を変えるアイディアの作り手として、3つのチームに分かれて課題解決のプランを作り上げていく。
2018年度のif deesign projectでは、
①「J2・水戸ホーリーホック」とともにスポーツを軸とした地域活性プランを考える「スポーツ×地域」
②栗の生産~販売を行う「あいきマロン株式会社」とともに笠間の栗の地域ブランド確立をテーマにした「食× 地域」
③「カフェ・日升庵」とともに筑波山地域の新たな人の誘引策を企画する「山×地域」
の3つのテーマを設定。
受講者たちは、茨城や地域を良くしようと活動を続けるパートナー企業3社と連携。約3か月の間に、フィールドワークやワークショップを通して、それぞれの企業が持つリアルな課題や茨城の魅力について学んでいく。
それだけでなく、自主的に茨城と東京を行き来したり、チーム内でミーティングを開いたりしながら「もし自分たちだったら、茨城でどんなことができるか」を探り、各企業とチームが連携しながら企業や地域の課題解決のプランを作っていく。そして、プログラムの最終日には、パートナー企業に対して企画のプレゼンテーションを行う。
if design projectの受講生たちは、それぞれがデザイン、マーケティング、プロモーション、事業企画などのスキルやノウハウがあり、かつ、熱意を持った人ばかり。そんな受講者たちが茨城と意識的に関わり、本気になって課題解決プランを考えていくことで、茨城の未来を変える力のある現実味のあるアイディアが生まれる。そして、約3か月間のプログラムが終わった後も、茨城県内で企画として実行され、受講生と地元企業、そして地域との関係性が持続していく。if design projectでは、そんな展開を期待しているのだ。
プログラム内では、既に様々な地域で活躍されている方々もメンターとして参加。受講者たちには、受講生たちの企画をサポートするだけでなく、メンターそれぞれの経験や実績に基づいたレクチャーを行うなど、受講生たちが、より完成度の高いプランづくりをするための手厚いサポート体制を整えている。
茨城の人になった気分で地域に関わる
if design projectへの参加・申込者は、「今は住んでいないが、かつては住んでいた」「仕事を通して茨城と関わることがある」という人もいれば、「ゆくゆくは地方に関わった仕事をしたい」「地方を活性化する策を考えるプロセスを体験し、自身の仕事に活かしたい」といった人まで、さまざまだ。
プログラム開始当初、受講者たちが茨城県に持っていた印象は様々。例えば、「スポーツ、農業、自然などに魅力を感じる」と地域資源に着目する方もいるし、かつて茨城に住んでいた人の中では「10代の頃は閉鎖的で文化的なものが少なくつまらない場所と思っていたが、一度離れてみる中で茨城の良さや可能性があることに気づいた」と過去と現在で違う印象を持っている人もいる。また、都内へアクセスしやすい、住みやすい、といった印象を持っている人もいた。
一方で、「友人に『茨城って何が有名なの?』と聞かれた時に、おすすめできる場所が思いつかない」「地域に良いものがあるはずなのに、それを活かしきれていないし、外にアピールし切れていないのでは」「茨城県内の自分の地元は、限界集落になりつつある」「駅前商業施設の跡地問題」など、危機感や歯痒さも感じていたそうだ。
参加動機については、「地元茨城での産業の再興に対する強い思いがあった」「地域を盛り上げるアイデアを試しながら、今後の自分の糧としたい」「茨城にUターンするつもりでいるので、そのために地元を少しでも面白くしておきたい」「子育ても仕事も充実させる場所として、茨城を考えている」など、前向きなものばかり。プログラム参加の申し込み段階から、自分のスキルや経験をもとに、茨城に対してどんなこことができるかをしっかりとPRする意欲の高い方が多くいた。
そんな受講者たちの意欲を表すように、プログラムの期間中はチームごとに、現地調査やフィールドワーク、地域との交流企画などを自発的に計画し、プログラム日程以外にも何度も茨城まで足を運んで地域や企業に対し積極的に関わっていった。
最終プレゼンテーション用の資料を作りこんでいく際も、説明用のスライドを作るだけでなく、Webサイトのサンプル、パンフレット、グッズなども作成。より説得力があり、茨城の未来に対し高い期待を感じさせるプランが出そろった。
if design project開始当初は茨城に馴染みが無かった受講者たちも、「プラン完成に向けたアプローチを進めていく中で、茨城県の魅力やポテンシャルを自然と見出すことができた」「場所や物だけでなく、茨城県で精力的に活動する人たちに出会えてよかった」という受講者たちの声が多くあった。
また、if design projectのパートナー企業をはじめ茨城のヒトに出会うことで、そこからさらに多くのヒト、情報、地域の活動などを発見し、「地方が抱える課題に対して何ができるか」を真剣に考えるきっかけにもなったそうだ。「if design projectに関わりながら、半分茨城の人みたいな気分になった」と語る受講者も現れた。
if design projectを終え、受講者たちに今後の関係人口や茨城との関わり方について聞いてみると、
「今回作ったプランを自分たちのチームだけで実現していくことは難しい。だから、色々な仲間を募ったり、プランの試行をしてみたりしていきながら、活動を続けていき、プランをブラッシュアップさせていきたいです」
「企業の副業解禁や働き方改革といった流れもある中で、茨城に本当に関わろうとする人たちへの手掛かりを作るのが必要。その1つの機会として今回のif design projectは、大いに手がかりになったと思います」
と語り、今後も茨城県に積極的に関わっていく姿勢を感じられた。そして実際に、受講者たちが茨城で起こす次のアクションは、すでに動き出している。
受講者たちの関わりは続いていく
今年度のif deesign projec受講生たちは、公開プレゼンテーションからおよそ2か月経った2019年2月現在、チームごとに以下のような活動を進めている。
「スポーツ×地域」チーム
if design projectでプランを作った上で、パートナー企業の水戸ホーリーホックへ改めてヒアリングを実施。さらに、水戸ホーリーホックのクラブハウスである「城里町七会町民センター アツマーレ」にてワークショップイベントを5月ごろに開催するべく、企画検討している。
「食×地域」チーム
自分たちが作ったプランをさらにブラッシュアップさせて、笠間市関係者にも披露。ヒアリングや調査を行いつつも、今後の進め方を検討中。チームとしての名刺を作るなどして、次のアクションに移る準備を着々と進めている。
「山×地域」チーム
筑波山での合宿を行いながら、今回のパートナー企業である日升庵とともに今後の展開について話し合う。また、筑波山の麓で行われるイベント「ゆけゆけ、乙女のつくば道」ではチームとして出店し、if design projectの中で考案していったプランの一部を実践することが決まっている。
どのチームも、アイディアを作るだけでは終わらせず、実現に向けて動き出している。
かつては茨城県に関心がなかった人たちも、if design projectの受講者として参加することで、意識的に茨城県に関わっていく関係人口となった。受講者たちがこれからも積極的に活動していくことで、さらなる関係人口を呼びこみ、企業や地域の課題も解決する方向に進んでいくだろう。
現在、魅力度ランキング47位の茨城県。これからどんな変化を遂げていくのか、1年後、2年後と展開が進むにつれ、どんな未来が生まれてくるのか楽しみだ。