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茨城のヒト・コト・バ PEOPLE, THINGS, SPOTS OF IBARAKI
茨城の体験型農業テーマパーク
らぽっぽ なめがたファーマーズヴィレッジ
スタッフ、来場者、地域、企業がみんなで農に関われる、体験型農業テーマパーク
霞ヶ浦と北浦に挟まれた行方市。ここは肥沃な土壌と豊かな自然環境に恵まれた土地で、茨城県の中でも特に農業が盛ん。サツマイモの生産においては、日本有数とも言われる。
そんな農業地域の中にある「らぽっぽ なめがたファーマーズヴィレッジ(以下、なめがた ファーマーズヴィレッジ)」は2015年にオープンし、白ハトグループが運営する、サツマイモを中心とした体験型農業テーマパークだ。
来場者たちは、年間を通して農業に関する「食べる」「遊ぶ」「育てる」「作る」「知る」「考える」「つながる」などの体験ができる。楽しみながら農業を身近に接することができるのが特徴だ。施設内には、サツマイモなどの農園や、サツマイモスイーツ製品の製造工場もあり、ここで作られた製品は全国に流通されている。6次産業の発展にも一躍を担っている。
様々なアプローチで農業を体験し、農業を身近なものにしてくれる場所、なめがたファーマーズヴィレッジ。今回は、なめがたファーマーズヴィレッジ広報部の尾花美咲(おばな・みさき)さんをはじめ、施設スタッフに案内をしていただきながら、この施設の取り組み、働く人、地域との関わりについて教えていただいた。
年間を通して、気軽に農業にふれあえる
尾花さん「畑で四季折々の農業体験を楽しんでいただけます。2月末ごろならイチゴ狩りができますし、春はタケノコやレンコン、夏はトウモロコシ、秋にはサツマイモの収穫もできます。こういった体験を身近に感じていただきたいですね。『日本の農業をステキにしよう!』という思いを持って、なめがたファーマーズヴィレッジを運営させていただいております」
なめがたファーマーズヴィレッジは、約20万坪を有する農業のテーマパーク。小学校の跡地を再利用した「ショップ&ミュージアムエリア」、自然がたっぷりの「ファームグランピング&キッズエリア」、そして各種農業体験を体験することができる「農園」からなる。
ショップ&ミュージアムエリアは、2013年に閉校した大和第三小学校の校舎を利用した施設。館内には、やきいもについて学んだり工場見学をできる「やきいもファクトリーミュージアム」をはじめ、地元の新鮮な野菜を買えるマルシェ、なめがたファーマーズヴィレッジで採れた野菜をたっぷり味わえるレストラン、熟成干し芋のテイスティングができる「干し芋Bar」などがある。
こでしか味わえない体験として「泥んこ上等!田植え祭り」「夏休み自由研究大作戦」「クリスマスリースづくり」など、季節のイベントも多数実施されている。世代を問わず様々な来場者が訪れ、2018年の県内外からの来場者は、約27万5千人にもなったそうだ。
地域や企業とのかかわり
地元企業や地域の学校などとも連携。地元の農業協同組合「JAなめがたしおさい」とは、サツマイモの仕入れや、他の農業推進などで連携している。
「さつまいもで日本一を目指そう」という取り組みも、JAなめがたしおさいと共同で進め、第56回農林水産祭「天皇杯 (※)」を受賞。さつまいもを通じて地域を盛り上げたことが評価され、地域連携の成果を残すことができた。
※天皇杯 (農林水産業およびスポーツにおいて、特に業績のあった最優秀者に対して授与される
茨城県のプロサッカークラブ「鹿島アントラーズ」とも相互に連携している。
約40,000人もの収容人数がある「鹿島スタジアム」内のスタジアムグルメ内には「らぽっぽなめがたファーマーズヴィレッジ」と「らぽっぽファーム」の2店舗が出店。試合観戦に訪れるたくさんの観客が、いばらきゴールドを使用したフライドポテトなどを味わうことができる。
また、なめがたファーマーズヴィレッジ内には、「鹿島アントラーズサポーターズ限定ファーム」も設置され、ここで開催される苗植会や収穫祭などのイベントが、クラブチームと地域とがより親密になる機会となっている。
幼稚園・小学校・子供会などが、遠足で訪れたり、行方市やその近隣市町村の中学校の職業体験や、インターンシップの受け入れも行っている。食育や教育の分野で地域と連携をしている。
12次産業という取り組み
なめがたファーマーズヴィレッジが、サツマイモの栽培や加工、流通、農業や自然体験にとどまらず、地域連携、地域貢献などの様々な取り組みを行っているのは、「12次産業」を目指しているからでもある。
12次産業とは、「はぐくむ」農業(1次産業)、「つくる」食品・加工(2次産業)、「つたえる」販売・サービス(3次産業)を掛け合わせた6次産業に、「観光」「教育」「子育て」「IT農業」「交流」「地域貢献」の6要素を加えた、独自の取り組み。「日本の農業をステキにしよう!」という思いを実現していくために、足りない要素を補いながら、少しずつブラッシュアップをしている。
2018年4月には、施設内に企業型保育園「やきいも保育園」もオープン。12次産業の「子育て」「教育」の部分を担っている。「サツマイモのように、強くてみんなから愛される子供に育ってほしい」という思いが込められたこの保育園では、年間を通した農育(のういく)を行っており、新鮮で安心安全な食材を食べられたりすることが特徴だ。
他にも、12次産業を実現するために、様々なスタッフが施設運営に関わり、所属する部署にとらわれない活動をしている。そんななめがたファーマーズヴィレッジの仕事について、スタッフの邉田広之(へた・ひろゆき)さんが話をしてくださった。
部門の垣根を越えて働ける場所
邉田さんは、行方市出身。2015年の施設オープン時から従事していて、現在は生産製造本部で製造グループ係長を務める。名刺には「高品質な製品を作る、フライヤーの知識日本一デザイナー」と書かれており、企業内での邉田さんへの高い信頼感が伺える。
製造の現場に立つ邉田さんもデザイナーとされているのは、「白ハトグループは、従業員みんながデザイナー」という会社の方針があるため。
以前は都内の保険代理店で働いていたが、Uターンした後になめがたファーマーズヴィレッジに就職。実は、この施設の前身である大和第三小学校のOBでもある。地元で就職先を探していた際、オープン前のこの施設がスタッフを募集していたことをきっかけに就職。施設の取り組みだけでなく、「自分の育った母校がどう生まれ変わるのか」ということにも興味があったそうだ。
「フライヤーの知識日本一」というだけあり、邉田さんが現在担当しているのは、芋けんぴのようなフライヤーで揚げて作る製品。芋けんぴであれば、1日で30,000パックもの商品を製造し、全国に流通させている。
新しい商品開発を行う際は、邉田さんも他の部門とも連携。商品開発の部門、製造部門、機械のメンテナンス部門などとも密に連携しながら、味、製造方法、パッケージなども考えていくそうだ。
邉田さん「施設内の事業で、1次産業から3次産業まで関わりが密で、部門の垣根なく働けるのが魅力ですね。最近、営業の仕事もさせていただく機会があって、コンビニエンスストアの本社に行かせていただきました。自分たちが製造した商品が、お客様からどんな評価を聞きかせていただくというのを経験しました。それがとても面白かったので、今後できるなら、営業部も経験してみたいですね」
スタッフみんなが地域とつながる
邉田さんが主に担当する仕事は、サツマイモ製品の製造だが、来場したお客様への工場見学ガイドを担当することもある。製品の製造が無い日は、工場スタッフが、お客様に機械のデモンストレーションを交えながら説明することもあるそうだ。
邉田さん「自分が中学校を卒業してから何年か経つと、地元のいくつかの小中学校が統合していき、今では地域の子供たちが通学する姿もあまり見られなくなってしまった。でも、この施設ができたことで、家族連れや小さなお子様の姿を見られるようになりましたね」
農産部で働く長井翔太朗(ながい・しょうたろう)さんは大阪府出身。ファーマーズマルシェで商品整理の作業をしているところお話を伺ってみると、
長井さん「なめがたファーマーズヴィレッジは、農業を通してお客様とコミュニケーションをとれる場所ですね。お客様を案内する際には、農業への関心を持ってもらったり、就農などへのハードルも下がればいいな、と思いながら話し掛けるようにしています」
と語ってくださった。施設のスタッフの「農業を身近なものにしていきたい」という思いを感じられた。
農産部の鈴木夢(すずき・ゆめ)さんも、茨城県外からやってきたスタッフ。
鈴木さん「去年入社して、現在1年目です。もともとは法律関係の勉強をしていたのですが、『おいも株オーナー制度』でなめがたファーマーズヴィレッジを知りました。サツマイモが好きで、最初のきっかけは『美味しいお芋が食べたい』というところでしたね。実際に働いてみて、畑での農業だけでなく、イベントなどたくさん企画しているので、その中でお客様と話をしながらサツマイモや農業について伝えられるのが面白いですね」
実は、なめがたファーマーズヴィレッジのスタッフは、担当部署の肩書以外に「兼業農家FARMER」という肩書を持つ。生産製造本部の邉田さん、広報部の尾花さんはもちろん、社長も兼業農家FARMER。ちなみに、畑に直接関わる農園部だけは「専業農家」と名乗っている。
お客様と一緒にサツマイモの苗を植えたり、収穫したりする「おいも株オーナー制度」のイベントの中では、部署に関係なくスタッフが参加。春には苗を植えたり、秋には収穫の芋ほりをしたり、企画を考えたりしながら、スタッフみんなが畑と施設にやってくるお客様に関わっていくそうだ。
スタッフみんなが、お客様や地域の人々と一緒に顔を合わせて農作業をすることで、お互いに信頼関係が生まれ、農業や地域への関心も高まっていくのではないだろうか。
みんなが農業に関われる場所
本来、農業は身近なもののはずだが、それを実感したり、実際に土や作物に触れる機会は少なくなってきているように感じられる。また、生活圏が都市部であるほど、農の世界を直に感じることは難しいかもしれない。
だからこそ、農業大国茨城県ならではの施設、なめがたファーマーズヴィレッジで、作物を食べることだけでない様々なアプローチや、就農よりももっと気軽な感覚で、農業の世界に関わってみることを提案したい。
まずは足を運んで広大な敷地を散策するだけでも、作物を育てていく営みを感じられるかもしれない。季節ごとのイベントや、おいも株オーナー制度に参加することで、いつもより少し深く農業の世界を知ることができるはず。この施設のスタッフになることも、農業へのかかわり方の一つだ。
「食べる」「遊ぶ」「育てる」「作る」「知る」「考える」「つながる」を通して農業に関わることができる、なめがたファーマーズヴィレッジ。自分の興味のあるところをきっかけに、農業を身近なものにしてみてはいかがだろうか。