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茨城のヒト・コト・バ PEOPLE, THINGS, SPOTS OF IBARAKI
日立市
ひたち若者かがやき会議
若者が自分らしさを抱いて挑戦する、日立市のファンづくりプロジェクト
地元が元気なのは嬉しいし、一生懸命地元を盛り上げようとする人たちの活動があることは、もっと嬉しい。そして、その輪の中に入り仲間と様々なアクションを起こせたら、人に教えたくなるぐらい地元を好きになっていくはずだ。
いま日立市では、そんな想いを抱く若者と日立市が手を取り合い、「日立ファン」を生み出す取り組みが行われている。今回は、ひたち若者かがやき会議の担当者と、共同代表でプロジェクトリーダーでもある4人から、活動への想いとこれからの展開を伺った。
若者と日立市で「日立ファン」を増やす地域活性化プロジェクト
日立市のファンを増やしたい。日立市を舞台にかがやきながら成長し、心豊かに暮らしていける環境を作りたい。
そんな想いを抱く若者と、日立市が手を取り合って立ち上げた、地域活性化に取り組むボランティア団体「ひたち若者かがやき会議(以下、若者かがやき会議)」をご存じだろうか。
若者かがやき会議には、「日立市をもっと住みよいまちにしたい」「何かにチャレンジしたい」「日立市を楽しくしたい」といった想いを抱く、日立市内外から集まった総勢14名の若者たちがコアメンバーとして参加。「発信」「地域発見」「つなぐ」「子育て」「若者の場づくり」をテーマとした5つのプロジェクトに分かれて、日立市の未来を創る多様な活動を展開している。

若者かがやき会議の公式ロゴ。担当したのは、茨城県出身で、日立市にゆかりのあるデザイナー久保木香さん。「関わる皆さんが(ロゴを)胸に掲げることで自分がキラキラするような1つのツールになれば」という想いが込められたデザイン。
メンバーは、年齢、性別、普段の仕事や人生のバックグラウンドに縛られず、ときに楽しく、ときに真剣に、大人の部活動のように若者かがやき会議に参加している。世代を超えた協力者も巻き込みながら、日立ファンをじわじわと増やしているところだ。
関わり方も様々で、活動内容の濃い順に、組織の運営とプロジェクトの企画・実践を主動する「コアメンバー」、若者かがやき会議が企画する事業に参加する「メンバー」、事業に直接参加しないが活動を応援する「サポーター」の3つがある。それぞれのライフスタイルに合わせた関わり方が可能だ。
市の担当者もフレキシブルに動く。日立市が共創を目指すビジョン「かがやく若者であふれるひたち」の実現と、コアメンバーの楽しく充実した活動を共創させるために支援を惜しまない。
そんな心強い存在が、現在、若者かがやき会議を担当している日立市 生活環境部 女性若者支援課 の下田恭子(しもだ・きょうこ)さん。
下田さん「日立市のことが好き、日立市をなんとかしたい、という想いをもった若者の皆さんが自らの意思で参加してくれることがとても嬉しいです。若者世代の皆さんが、この日立市で、自分らしく想いを実現するために、微力ですがサポートさせていただいています」

若者かがやき会議と日立市の橋渡しをする、日立市役所の下田さん。モチベーションの高いプロジェクトリーダーやコアメンバーたちがいきいきと活動できるように、「まずはしっかり会話すること」を大切にしているそう。平日・休日問わず忙しく動くが、「やりがいのある企画を担当させていただいています」と仕事を楽しんでいる。
若者の成長と活躍を支える魅力あるまちへ
若者が主体となり活躍する若者かがやき会議。このプロジェクトは「かがやく若者であふれるひたち」を実現させるために、次のような経緯で生まれていった。
日立市では、就学や就業、住宅の住み替えなどをきっかけに若い方々が市外へ転出してしまうという状況を改善すべく、「第2期日立市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定。総合戦略における若者応援という重要なテーマを具現化するため、若者世代を中心とした起業家、各種団体代表、大学生等で構成した策定委員会を設置、2021年3月に「ひたち若者かがやきプラン(以下、プラン)」を策定した。
これからの時代を担う若者世代(18歳から39歳)が、日立市を舞台に、かがやきながら成長し、心豊かに暮らしていける環境づくりの実現に向かっていく。このプランには、そんな指針が示されている。
その実現に近づくための一歩として2021年7月にスタートしたのが、若者かがやき会議だ。
古参の日立ファンも同志。世代を超えた共創も生まれる

若者かがやき会議の学生コアメンバーが主催した、日立市発祥の球技「パンポン」のイベントでは、先輩世代が講師として参加。若者の「パンポンをやってみたい」という声と、先輩世代の「パンポンをみんなに知ってもらいたい」という想いがつながり実現した。
活動の主体は若者だが、日立市で長く活動してきた先輩たちへのリスペクトも忘れない。
市内には、まちのために昔から活動を続けてきたコミュニティが存在している。その歴史は古く、1974年の国体開催を期に始まったゴミ拾い活動をきっかけに、地域コミュニティが生まれていったのだそう。それらは今でも続き、80代で地域コミュニティの代表を務める方もいるほど。言わば「古参の日立ファン」だ。
下田さん「世代間の交流も、生まれてきています。先輩世代が、若者かがやき会議が企画するイベントに参加してくださったり、『自身の活動を若者目線で伝えて欲しい』と相談があったり、まちの魅力を伝えるテレビ番組への出演依頼があったりと、活動に対する先輩たちの後押しを感じますね」
日立市の未来を想う同志として、多様な世代が手を取り合う共創が、確実に始まっている。
それぞれの「自分らしさ」を抱いて取り組む5つのプロジェクト
2022年4月から2期目となる若者かがやき会議では、5つのプロジェクトが動いている。4人の共同代表がそれぞれプロジェクトリーダーとしてコアメンバーをけん引。参加しているのは、特別なスキルを持ったプロではなく、まちへの想いを持った人々。
主体となる若者は、多様な世代を巻き込みながら、どんな想いをもってプロジェクトに取り組んでいるのだろうか。ここからは、リーダーたちが話してくれた活動と想いの一端を紹介したい。
発信プロジェクト(通称:HITACHEER ヒタチアー)

2022年10月にHITACHEER公式サイトがオープン。「好きなことは知っていることの中からしか見つからない。」「ひとりは有限、みんななら無限。」をキーワードに、日立市の魅力を再編集している。
プロジェクトリーダー
新妻幹生(にいつま・もとみ)
2021年にUターンし、地元日立市の茨城キリスト教学園に転職。同学園初の広報室立ち上げメンバーとなる。個人では日立市~水戸市を中心とした市民活動・PR・マーケティング業務など、「地域活性プロデューサー」として活動している。若者かがやき会議では発信プロジェクト【HITACHEER】のリーダーとして、若者への「伝え方」教育と、発信力不足の事業者を助け、県北地域の発信力向上・地域活性化に寄与するための活動を行っている。
プロジェクト概要
若者目線の発信ポータルサイトを作り、日立市の良さを再編集し、発信するプロジェクト。
サイト運営にあたって、発信者として必要なノウハウを学ぶクリエイター講座を開催し、日立市の若者たちに「言語化し伝える力」を伝授。現在、HITACHEER公式サイトからの情報発信を実施中。サイトからの発信の担い手は、新妻さんを含めたプロジェクトメンバー4人のほかクリエイター講座卒業生から選抜された「HITACHEERS」が行う。HITACHEERは日立+応援の造語。メンバーは、主に発信に興味があり、日立市出身・在住ながらも地域の魅力を語りきれないことにモヤモヤを感じている社会人と学生たち。
新妻さんにとって「自分らしく生きる」とは、「なぜ、なんのためにこうしたいのか?と自分なりに納得できる理由を持ちながら、アクションを続けられること」。そう語るように、クリエイター講座ではスキルを学ぶだけでなく、受講生たちのアイスブレイクや内省も大切にしてきた。

新妻さんのHITACHEERの構想は、2021年度に開催されたSTAND IBARAKIへの参加から生まれていった。クリエイター講座の仲間たちと情報発信するのは「自分一人で発信するより、一緒に発信できる仲間と取り組んだ方が化学反応が起きて面白くなると思うから」という期待がある。
企画の背景
「日立市には温かい人がたくさんいます」と話す新妻さん。まちのプレーヤーたちは互いの顔が見える関係性で、若者の背中を押してくれる方も少なくないそう。
その一方で新妻さんは、自分の想いを実現したいけど上手く踏み出せない同世代が多いとも感じている。
新妻さん「それでも、そのくすぶった想いを言葉で伝えることができれば、まちのプレーヤーが手を差し伸べてくれて、自己実現につながるはず。そのために、まずはクリエイター講座を開催して日立市でチャレンジしたい人の気持ちを取材し、発信できるようにしたいと思いました」
プロジェクトを実践してみて
クリエイター講座では、発信スキル教育にとどまらず、発信というテーマを基に仲間とのつながりが生まれる授業を行った。

最終回では、これまでの講座を踏まえて撮影・執筆した風景や言葉を共有。プロジェクトメンバーは、「自分の言葉で日立市の魅力を語る参加者の姿が印象的だった」と振り返る。
新妻さん「講座の参加者たちもまた、くすぶった気持ちを抱いています。1人は不安だけど、仲間がいれば一歩前に進めるはず。なので、アイスブレイクの時間をしっかり設け、『一緒に挑戦する仲間がいる!』と安心して挑戦できるようにすることを心がけました。また、『なぜこの講座に参加したのか』という内省も大切にしました。その理由をきちんと言葉にできたほうが、自分がやりたい活動にしっかりと熱を注げますしね」

講座の集大成として「ひたち・まちなか・ありのまま展」という市内巡回展示を開催。多くの方に見ていただく機会となった。
これからの展開
クリエイター講座を経て、現在はHITACHEERからの情報発信を行う新妻さん。若者目線で地域の魅力を再編集しながら、先輩世代との連携も模索する。
新妻さん「日立市内には先輩世代と若者のコミュニティが別々に存在していますが、『若者を応援したい』と言ってくださる先輩方もいます。両世代が手を取り合い、まちがさらに盛り上がるような動きを生み出していきたいです」
また、学生や若い世代には、積極的にHITACHEERに関わってほしいのだそう。
新妻さん「取材や執筆、コミュニケーション、そして自己理解を通して、社会人としての基礎力を育むような機会としても使って欲しいです。HITACHEERの活動が、『将来どのように日立市に関わっていくか』を探るきっかけになったら嬉しいですね」
産直講座プロジェクト

産直講座プロジェクトが企画した「ひたち産直講座vol.2」のキービジュアル。日立市出身のデザイナーの野崎康平さんがデザインを担当した。
プロジェクトリーダー
高久香里(たかく・かおり)
茨城オトナ女子会代表/食育スクール&プロジェクトIBARAKI HOLIC-いばらきほりっく- 主宰/イベント企画運営、食育アドバイザー、フラワーデザイナー。 第二子出産後、家事・育児・仕事のバランスや気持ちの浮き沈みに悩んだことから、 2017年に茨城オトナ女子会を発足し、女性たちに自分時間を持つこと(=心の余裕)の大切さを伝えるべくイベントという形で自分時間を届ける活動をしている。若者かがやき会議では、産直講座プロジェクトのリーダーとして、講座を通し、地産地消の重要性を伝え、日立市で「暮らすこと」や「働くこと」を考えるきっかけと、関係人口創出につなげる活動をしている。
プロジェクト概要
日立市の魅力である海と山を舞台に、市内で暮らし、働き、活躍する若者=「ひたちびと」を講師に迎え紹介。実際にその人々の仕事を疑似体験できる講座を展開し、日立市内での暮らしを考えるきっかけづくりや、若者同士の仲間づくりにつなげるプロジェクト。バックグラウンドは異なるが、「食」というテーマで、気づきと学びを与え続けるメンバーがプロジェクトを企画。
リーダーの高久さんは、一女性として、「若者の世代は、結婚・出産・子育てなど変化の大きい時間」だと実感中。自分自身、母親の顔・妻の顔・一女性としての顔など、役割がシーンによって変化する日々を送っている。だからこそ高久さんは、「好きなものを大切にする」ことを、自分らしく生きることへの指針としているそうだ。
この講座の講師を担う「ひたちびと」たちも、自分の好きなものを大切にしながら、海や山を舞台に仕事に励む人々だ。

若者かがやき会議以外でも、県北地域を中心に精力的に活動する高久さん。自身の事業の中でも茨城の魅力的な人や事業者に出会ってきた。「日立の魅力的なヒト・モノ・バショをみんなにも共有したい」という想いを抱く。
企画の背景
高久さんは、日立市で暮らす人や場所、そしてそこで作られる物に魅力を感じている。そんな高久さんは、日立市の若者たちが都会に出て行ってしまう原因の一つとして、「まちに潜む魅力に気づけていないから」ではないかと考えている。
もちろん、市外で様々な経験を重ねるのも選択肢の一つ。ただ、市外に出ていったとしても、「日立市は良いところだよ」と言えるようになって欲しい。このプロジェクトには、高久さんのそんな想いが込められている。
高久さん「講座を通して現地に足を運び、地域で出会った事業者さんや、まちでいきいきと暮らす方々と話しながら、『こんなに魅力ある人たちが日立市に暮らしているんだ!』という発見を、多くの方に知っていただきたい想いからプロジェクトを企画しました」
プロジェクトを実践してみて
オンラインではなく、直接現地に足を運び、話を聴くからこそ、日立市での暮らしや働くことをより実感してもらえた。そして、地域に根差した「ひたちびと」の話は、日立市での暮らし方をイメージすることができ、受講生たちのまちを見る解像度も高めることができた。
高久さん「講師が語る、経験から生まれる言葉は本当に強いと思います。その言葉に影響されてか、受講生が自分のSNSを通して自主的に発信してくれることもあります。講座に参加したことで、『地域に興味がある人』から『地域を伝える人』に変化してくれたことがとても嬉しいですね」

ひたち産直講座では、「ひたちびと」の仕事の現場に足を運び、講義や仕事体験を行う。また、受講者たちが実際に現場を体験した感想を話し合い、理解を深めるグループワークも実施している。こちらは、日立市の樫村ふぁーむに伺った際の写真。
これからの展開
どうすれば若者世代が日立市を選んでくれるのかを模索する高久さん。若者世代が就職や転職で市外に転出してしまう」という現状に向き合い、解決につながるための取り組みとして、仕事や働く場所をキーワードにした講座をこれからも企画していく。
高久さん「関わってくれる学生が増えた今、仕事や働く場所にアプローチする講座を増やしていきたいと思っています。学生たちは『日立市内での就職先をよく知らない』と言います。どんな企業がありどんな仕事があるか、知ってもらう機会、語れる機会を増やしていきたいですね」
コンシェルジュプロジェクト

コンシェルジュプロジェクトで開催する子育て座談会では、託児所を設け、大人同士が気兼ねなく会話できる空間づくりをしている。ママだけでなくパパの参加もあり、新しいコミュニティが生れている。
プロジェクトリーダー
松村泰葉(まつむら・やすは)
編み物クリエイターhakssiy工房店主/編み物愛好家集団「あみもんどころ」メンバー。1994年福島県浪江町生まれ。震災を機に日立市に移住。子育てでライフスタイルが一気に変わったことで、「自分を生きる」ことが自分の軸となる。ネット上で主催した編み物イベントではのべ200人以上を動員。さらには2021年に自費出版した手芸本が完売。若者かがやき会議では、コンシェルジュプロジェクトのリーダーとして、自身の子育て経験から、より暮らしやすい環境づくりのため活動している。
プロジェクト概要
子育て世代がより暮らしやすいまちを目指し、子育てというテーマを基に、垣根を越えてつなぎ・つながる活動をしている。子育て中の方、子育て支援団体、関係機関、地域団体などが集まり気軽に意見交換でき、自分らしくいられる環境を創出するプロジェクト。さらに、リアルな意見を共有しながら、より良い子育て環境づくりのために自分たちには何ができるかを考え、実践している。子育て中のメンバーが実体験を踏まえつつ、異なるライフスタイルの現状を把握しながら「子育ては日立市で」と言われるまちを目指し奮闘している。また、本プロジェクトに共感してくれた他団体メンバーとの連携も図りながら推進している。
ネットの情報や自分の生活環境の変化などに流されてしまいがちな今、松村さんが自分らしく生きるために大切にしているのは「自分の好きに嘘をつかないこと」。コンシェルジュプロジェクトでは、子育て世代の選択肢を増やし生活の中で「好き」に出会う機会を増やそうとしている。

福島県浪江町生まれの松村さんは、震災をきっかけに日立市に移住。浪江町と日立市を照らし合わせながら、しみじみと「海と山があるまち」の良さを感じている。
企画の背景
現在子育て中の松村さんは、実際に感じた子育てにまつわる不便や不満からこのプロジェクトを考案した。
松村さん「育児の隙間時間を縫って、行政手続きを効率的に済ますための情報を探しても、該当ページが見つからない。窓口の方に聞いてみようと子どもを抱いて市役所に行っても、あちこち往復しなくてはならない。そんな不便を感じた経験があります。自宅から市役所まで片道40分以上かかるので、当日『書類不備のためやりなおし』となると、一日がつぶれてしまいます」
子どもの遊び場や、親の息抜き、情報交換の場所がないことも悩みの一つだそう。
松村さん「子供を安心して連れていける施設の情報が少ないことにも、もどかしさを感じていました。子どもを遊ばせながら親が息抜きできたり、子育て世代同士で情報交換ができたりする。そんな場所があれば、日立市はより安心して子育てができるまちになると思います」
プロジェクトを実践してみて
一言で「より良い子育て環境づくり」と言っても様々な形がある。まずは、求められていることを知ることからスタートしようと「子育て座談会」を開催。気軽に参加できるようオンラインも取り入れながら開催し、子育て・結婚・夫婦の形など様々なテーマで話し合い視野を広げている。
そんな松村さんの活動に共感し、プロジェクトに弾みをつける新たな協力者も現れた。
松村さん「日立市大みか町のマイクロクリエイションオフィス『micakel(ミカケル)』さんと想いが一致し、プロジェクトに協力していただくようになりました。協力者がいるだけでより目標に近づける感じがします。また、その他にも茨城キリスト教大学の子育て支援室さんや放課後児童クラブKusuKusuさんにも協力いただき、連携しながら活動しています。若者かがやき会議以外との交流が増えることで、子育てについて考える視点も広がっています」
若者かがやき会議としてプロジェクトを運営する中で、「日立市の心強さ」も改めて感じられた。
松村さん「市と一緒に行うイベントの企画・運営では、様々な人や関係機関との調整があるので、最初は面倒だと思っていましたが、その『堅さ=信頼』があることで、みんなが安心して参加できる企画が生まれることを実感しました」
これからの展開
より良い育児環境の創出に取り組む松村さん。子育て座談会の開催や施設との連携を通じ、情報検索の利便性向上についても日立市と協力しながら進めていきたいと話す。
松村さん「とくに乳幼児を育てている方は、細切れ睡眠で心身ともに辛いと思います。だからこそ、育児の情報検索や行政機関とのやりとりがスムーズになるような仕組みを考案し、まちでいきいきと子育てができるようにしていきたいですね」
つなぐプロジェクト(通称:CAPI)

CAPIの学生コアメンバーが企画運営した「パンポンイベント」の集合写真。先輩世代も一緒に楽しんだ。
※パンポン:1920年、日立製作所の山手工場が発祥の球技。当時は休み時間にキャッチボールをする人が多く、それが原因で工場内の窓ガラスが割ることが多々あったため、工場内でのキャッチボールが禁止に。以降、地面に線を引いてコートを描き、ゴムボールを手で打ち合うようになり、次第に手の代わりに廃材の板切れを用いるようになる。パンポンの名称は、競技中の打球音に由来する。
プロジェクトリーダー
藤田浩一(ふじた・こういち)
株式会社常陸風月堂 代表取締役社長。茨城県日立市の和菓子屋「常陸風月堂」の3代目。神奈川県で5年修行し、事業承継を目的にUターン。笑顔が生まれ連鎖する世界を実現するべく、付加価値を高めた和菓子販売や地域の和食店、コーヒー店とのコラボ商品を手掛ける。 和菓子業界の伝統を承継すると同時に、枠にとらわれない独自性と創造性で「笑顔の循環」を目指す。若者かがやき会議では、つなぐプロジェクト【CAPI】のリーダーとして、学生コアメンバーを見守りながら、共に成長するため活動している。
プロジェクト概要
若者のチャレンジをサポートしながら、若者が主体的に企画運営するイベント等を開催。日立市内に点在する若者団体との連携や、世代を超えた様々なコミュニティとの交流を図るプロジェクト。CAPIとは、Creativity(創造性)、Activity(行動力)、Planning(企画・計画力)、Identity(主体性、らしさ)の頭文字。メンバーは、自分が楽しいと思うことを実践し、いろいろな団体とのつながりをつくることに挑戦する学生と、優しく見守る社会人たち。
藤田さんは「自分が起点になって、その先に笑顔が広がる世界を作り出せたら、それが『自分らしく生きている』になるかな」と、熱い想いを抱く。プロジェクトでは若者を支援する側に回りながらも、若者からエネルギーをたくさんもらいたい、と自身の向上にも意欲的。

「まずはやってみる」が大事と語る藤田さん。「その一方で、自分が本当にやりたいことを見つけるのも大事。すぐに見つけるのは難しいけど、簡単なことからトライアンドエラーをしながら見つけていけばよい」と想いを語る。
企画の背景
2019年から続くコロナ禍の影響で、日立市内外のイベント開催が減少。人が集まる機会も減り、「人と繋がりたいけど、どうしたらいいか分からない」という声が、若者かがやき会議の学生メンバーから上がっていた。
その声を聞いた藤田さんは「相談できる人が周りにいれば、若者がチャレンジしやすくなるはず」と考え、プロジェクトをスタート。
リーダーは藤田さんだが、活動の主役はチームの若者。藤田さんは「失敗してもこっちが責任を持つから」と挑戦を支え、まずはやってみよう、と若者の背中を押す。
藤田さん「企画の完成度が100ではなく5であっても、まず実践して学ぶのが一番の成果。失敗は『改善点』として捉え、どんどん挑戦し、5だった完成度を少しずつ高めながら最後までやり切ってもらう。その経験は、社会に出てもいかされますね」
プロジェクトを実践してみて
CAPIに参加する学生メンバーたちが実践した企画の一つが、「パンポンイベント」の開催。企画・運営は大学生。
藤田さん「初回の開催のときは、不慣れな上にまだまだ学生気分。バタバタと企画・運営が進みましたが、2回、3回と開催を重ねるごとに完成度も高まり、お客様への配慮も行き届くようになりました。彼らが成長していく姿を見ていて、嬉しかったですね」

「パンポンイベント」の運営を行うコアメンバー。回数を重ねながら、お客さんの導線、イベントツールなどを見直し、参加者がより楽しめるイベントを実現していった。
情報だけでなく実体験から得られる経験値は、社会に出てからも大きな宝になると藤田さんは語る。
藤田さん「僕自身、実践の継続が結果や評価につながると気づいたのは、30歳過ぎてから。若いうちからそれに気づけたら、可能性は無限大です。とはいっても、僕らが口うるさく伝えたところで刺さらない。だから、実践を重ね続け、ふとした瞬間『あのとき言われたことだな』と理解してもらえれば、それでいいと思います」
これからの展開
日立市出身の藤田さんは、一度上京し、Uターンで地元に帰ってきた。そんな経験から、東京の良さを「いろいろな人や考えに触れられる環境」と話す。
そして、若者かがやき会議を発端に、日立市でも同様の環境を作れるのではと可能性を感じている。
藤田さん「小さなイベントでもいいからどんどん開催すると、日立市内や県内はもちろん、東京からも人が来るようになり、いろいろな人と出会えるまちになるのではないでしょうか。つながり度合いは人それぞれ違うけど、若者かがやき会議が、いろいろな人や団体をつなぐパイプ役になれたらいいですね」
場づくりプロジェクト
プロジェクト概要
若者かがやき会議のコアメンバー全員で取り組むプロジェクト。
人と人が繋がりを持てて交流できる場(ハード・ソフト)となるような若者の活動拠点の整備について検討していく。
さらに、若者たちが集まれるリアルな「場」を実現するための、先進地への視察、日立市内での物件探し、資金調達方法の研究なども行う。
企画の背景
プラン策定に伴うアンケート調査やグループインタビュー、パブリックコメントなどから、若者世代が気軽に集まれる場がほしいという意見が多かった。実際に、いま日立市内には「若者が気軽に集まる場所」を掲げる施設は無く、課題の一つになっている。
コロナ禍により、オンラインも集まる場として一般的になりつつある。しかし、リアルな場と、そこから生まれる思いもよらない化学反応を大切にしたい。そんなまちの課題と、リアルな場所に対する可能性への期待から場づくりプロジェクトが生まれた。
プロジェクト実践

視察先の一つ、多摩市若者会議が運営する「未知カフェ」。運営スタッフからお話を伺いながら、若者かがやき会議における人員増の仕組みづくりや、場所に関わる人たちのターゲティングの重要性などを学んだ。
プロジェクト実践内容は、大きく分けて二つある。1つは、場所を作るための成功事例の視察。
2022年度は、オンライン企画や、リアルな場を使ったイベントを開催し、「互いに時間を共有する」ことも一つの場になりえることを参加者と共有。
それだけにとどまらず、成功事例を視察し、日立市における「リアルな場の在り方」を改めて見つめなおした。視察で足を運んだのは、多摩市若者会議が運営する「未知カフェ」、埼玉県草加市の「シェアアトリエつなぐば」など。
実際に場所を訪れ、その場所に関わる人たちが体験し、考えてきたことを伺うことで、「場」には地域の賑わいと繋がりを生み出す力があると実感。さらに、実際に顔を合わせて人と出会うことで、化学反応が生まれることにも気づいた。

自分たちに拠点ができたときのシミュレーションとして、日立市女性センター「らぽーるひたち」の一部屋をお試し拠点として使用。居心地のいい、リラックスできる空間で定例会を開催。
もう一つは、若者かがやき会議の拠点づくり。まちを巻き込みながら進めるプロジェクトなので、コアメンバー同士で目線を合わせつつも、コアメンバー以外の意見も聞きながら推進している。
視察を通じて、「場があることで、自分たちの活動を可視化でき、活動の輪を広げることもできる」ことを実感。若者かがやき会議の拠点を作るべく、自分たちの足でまちを探索し、空き家・倉庫・アパートなどの物件探しに奮闘している。
現在、若者かがやき会議では、公共施設の「日立市女性センター らぽーるひたち」の一部屋をお試し拠点として使用させてもらっている。「お試し」としての使用ではあるが、「公共施設の一画が拠点となった場合」のシミュレーションとして、さまざまな経験値を積み上げているそうだ。
これからの展開
引き続き地域や企業と連携を図りながら、場づくりに取り組んでいく。若者かがやき会議の拠点のため、引き続き物件探しや大家との交渉など地道な活動を続けるほか、若者世代の意見聴取のためのワークショップ、資金調達方法の調査研究なども、他のプロジェクトを推進しながら実施していく予定。
さらに、若者かがやき会議単独で場づくりを検討するのではなく、地域の方や民間企業とも手を取り合い、プロジェクトを進めていく。
まずは「覗いてみる」ところから参加できる

若者かがやき会議の定例会は、対面とオンラインのハイブリッド開催。回を重ねるごとに増していくアジェンダの厚みから、コアメンバーたちの活動の充実を感じられるそう。
「気になったら、定例会を覗きに来てください」
日立市役所の下田さんと共同代表でもある4人のプロジェクトリーダーがそう語るように、若者かがやき会議では「日立ファンを増やしたい」という想いを抱く人たちに門戸を開いている。コアメンバー、メンバー、サポーターと、どのような関わり方をするかは自由に選択できる。
新妻さん「最近は学生が定例会を見学してくれるようになりました。『若者かがやき会議自体を知りたい』という希望だったので、私たちの和気あいあいな雰囲気も真剣な話し合いも、包み隠さず見てもらいました。想いをもって取り組む若者かがやき会議の一端を、リアルに感じていただけたのではないでしょうか」
若者かがやき会議をきっかけに、まちの未来を創る当事者へ
日立市のファンを増やしたい。
そんな想いのもと、若者かがやき会議はこれからも活動を続けていく。長期的に、たくさんの人たちが関われるよう、仕組み作りにも力を入れているところだ。
下田さん「若者かがやき会議のコアメンバーひとり一人の熱い想いにより、とても良い形で進んでいます。この想いをずっとつなげていくことが目標です。若者世代には限りがあり、コアメンバーも入れ替わりがありますが、卒業後も『ここにいたから今の自分がいる。』と思ってもらえる場所になれたら嬉しいです。そのためにも、多くの方に若者かがやき会議のことを知っていただき、たくさんの方に関わっていただきたいです」

共同代表でもある4人のプロジェクトリーダーは、日立市長をはじめ日立市職員への活動報告も担当。2022年上半期の報告では、プレゼンを終えた後、日立市長から「“若者のためにできることって何だろう?“と長年かかっていた靄(もや)が少し晴れて、勇気と元気をもらった」とのコメントを頂いた。
長期的な運営を見据えたとき、現在の若者かがやき会議のメンバーの想いをつないでいくことがカギとなる。コアメンバーの入れ替わりにより、人の循環が生れる。この循環が継続できることで、日立市がより活性化し、素晴らしい環境になるのではと日立市役所の下田さんは考える。
下田さん「若者かがやき会議に関わることで、若者世代の皆さんは、自分らしい生き方を見つけて夢や目標を実現し、幸せを感じてもらえたらいいなと思います。また、そんな若い方の活躍が地域全体の力を高める原動力になって、多世代の皆さんにも元気と勇気を与えられたら嬉しいです。私自身、共に活動するコアメンバーに、元気をもらい、背中を押してもらっています。この体験をたくさんの方に実感していただきたいです。そして、日立ファンを増やしていきたいですね」

一度ファンになった方は、例え県外に行っても、海外に行っても、日立市の良さを伝える存在になるのではないだろうか。
日立ファンを増やしたい。日立市を舞台にかがやきながら成長し、心豊かに暮らしていける環境を作りたい。そんな想いを抱く若者と、日立市が手を取り合って、地域活性化に取り組む若者かがやき会議。
ここから生まれていく日立市の展開に、今後も期待が高まる。そして、「まちを盛り上げる当事者」として若者かがやき会議に少しでも関わってみることは、楽しく、意義深いアクションのはずだ。