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茨城のヒト・コト・バ PEOPLE, THINGS, SPOTS OF IBARAKI
大子町
吉成木材
ここに在る、仕事|吉成木材〈前編〉
ここに在る、仕事 / プロローグ
人の営みのなかでも、特に仕事というものは、その時代や社会と直接的、具体的に関係している。つまりは、ある仕事について知ることは、その仕事を取り巻くさまざまを知ることと言えるだろう。しかし、ここで注意しなくてはならないのは、なるべくそれを具体的に知ろうとすることだ。一本の木に例えてみれば、ただなんとなく見るだけでは、どれもこれも同じ木のように見えてしまう。しかし、葉や枝や幹の特徴を具体的に見れば、どれ一つとして同じ木はない。そうすることで初めて、その場の環境や木が担っているものが分かってくる。そうした事を念頭に置きながら、茨城県北の各地域に在る仕事、仕事の担い手の方に話を聞き、書き記すことをしてみたいと思う。また、一本の木の葉や枝や幹を具体的に見ようとするからこそ、土の下に隠れている根を想像することができる。それが、木の全体なのだ。全体を感得するセンスこそが、今、地域に関わるクリエイターに問われていることではないだろうか。
大子町に吉成木材という会社がある。その名の通り、木材を取り扱っている会社だ。山から木を切り出し、用途に応じて加工し、納品先に運搬する。基本的には住宅用などの特殊な加工等はしない。たとえば、木杭(ぼっくい)などがあり、珍しいものでは、鯉のぼりの竿(さお)などがある。
以前、千葉の片田舎に住んでいた時に林業に従事したことがある僕は、吉成木材のことが長らく気になっていた。町面積の約8割が森林という大子町において、森や木に関わる仕事は実際どうなのか、それを知りたくて、昨年末、吉成木材に向かった。
はじまりは運送業
大子町の中心街から車で西に十五分ほど行った先、相川という地区に吉成木材はある。社長である吉成さんはここで生まれ育ち、先代であるお父さんもここで生まれ育った。会社のはじまりを吉成社長に聞いた。
「先代である親父はもともと、木材の仕事をしていたわけではなくて、運送業をやってたの、仲間と共同経営で。当時、大子町には製材所が多かったから、製材所から関東にある木材市場まで木材を運送する仕事。それで、そのうちに、建築現場の足場や電柱にナガラ材(小径の木材)の需要があるということを聞いてきて、できるなら納めてくれないかと頼まれるようになって、最初はトラックの荷物が少ないときに、その荷物の上に積むような形で運んでたみたいだね。そのうちに、足場丸太の需要が増えて、運送業は仲間に任せて、うちは“ナガラ屋”ということになった。その頃はフォーク(リフト)もないから、手で積んだんだよ。ギッタンバッタンって言ってね、トラックの荷台にアングルみたいなのを溶接して手積みできるようにして、五メートル四十センチから七メートル二十センチのものまで、百本ずつくらいを小さいトラックに積んで運んだんだよね。山の中で乾かした材料が多かったから、軽いといえば軽いけど、大変だよ」